グルス アン テプリッツ -明治時代から愛されている、ローズ赤の名花
今回は久しぶりに四季咲きの品種のご紹介です。
「日光」という和名で明治時代から愛された「グルス・アン・テプリッツ」です。
俯いて咲くローズ赤の花からは、清々しい芳香が漂います。
作出者はハンガリーのゲシュヴィント。寒さの厳しい東欧でも丈夫に育つ品種を作出した育種家としてその業績が高く評価されています。「グルス アン テプリッツ」(テプリッツへの挨拶)は彼の故郷への思いが偲ばれる命名で、テプリッツは古くから知られた温泉地でもあり、ベートーヴェンとゲーテが出会った場所としても有名です。
一般的にはチャイナ・ローズに分類されていますが、ブルボン・ローズとして紹介されることもあります。
この品種の素晴らしさは、すぐには理解し難いかもしれません。
花は大輪ではないし、俯いて咲くので少しさみしい感じもします。
しかし連続開花性に優れ、青みを帯びた葉、柔らかさのある花茎、優雅な蕾の佇まいなど芳香以外の美点も多く、株の姿も美しくまとまります。大株にしてあふれるように咲く姿は、それは見事なものです。鉢植えでももちろん楽しめ、また剪定を軽くすると2mくらい伸ばせますので家庭用のアーチやちょっとしたトレリスなどにも好適です。
芳香はダマスクを基調としていますがレモンのような爽やかさも感じられ、大変清涼感のあるものです。
個人的には青みを帯びた葉の美しさとやわらかく風にそよぐ花茎の美しさに特に惹かれます。晩秋はローズ赤の色彩に深みが出て一層秀麗です。宮沢賢治が愛したばらとしても有名ですが、もう本当に、それにふさわしい名花と思います。他のチャイナローズと同じくうどんこや黒星病には注意が必要ですが、今後もずっと語り継がれる名花の一つと思われます。