カメラコラム

青空や葉をより色鮮やかに!PLフィルターの使い方

青空や葉をより色鮮やかに!PLフィルターの使い方

よく晴れた日に写真を撮影しますと、太陽からの反射が強く、全体的に写真が白くなってしまったという経験は多いかと思います。

一例を挙げますと、晴天下では下記のような写真がどうしても量産されがちです。

晴天時に撮影しますと、どうしても葉などの反射が強くでてしまい全体的に白っぽくなってしまいます。品種名「グレースドモナコ」。

もし可能ならば曇りの時を狙って撮影した方が植物の色を正しく撮影することができるのですが、天候など人の手でどうこうできるものではないのも現状です。

このような場合に役立つ道具が「PLフィルター」です。レンズに装着するフィルターの一種です。

このフィルターをレンズに装着することで一部の反射光を除去し、鮮やかな発色やコントラストを得ることができるようになります。植物においては、特に葉の反射などが除去され、本来の葉を写し取ることができるようになります。

今回はこの「PLフィルター」の使い方や注意点を書いてみたいと思います。

先ほどの写真と同じ状況ですが、こちらはPLフィルターを装着し反射光を除去した状態。葉の反射光が少なくなり、本来の葉の色がでてきました。

反射光を除去する「PLフィルター」

「Polarized Light(偏光) フィルター」の略称で、名前の通り「偏向した光」を除去するためのフィルターです。

「偏光(へんこう)」とは、ある振動方向に偏った光のことです。

「光」は波としての性質を持っているため振動する「方向」がありますが、太陽からやってくる光はあらゆる方向に振動した光となっており「偏光していない」状態です。しかし、一度「反射」すると光はある方向へそろって振動しはじめ「偏光した」状態になります。

「PLフィルター」は、この偏光した反射光の一部を除去する効果があります。フィルター内には目に見えない細かなスリット状になっており、特定の振動方向をもった光を通さない仕組みとなっています。

フィルターを通した偏光の仕組み(Wikipedia 「偏光板」より引用)

反射光は偏光しているという性質を利用することで、写真の彩度やコントラストを下げる要因となる反射光の一部を上手に除去しているのです。

フィルターはレンズ前玉部分に装着する

レンズフィルターは、通常レンズの前玉部分に装着します。カメラのレンズにはフィルターを固定するための溝がありますので、フィルターを回転させることで装着することができます。

ただし、レンズ径に合ったフィルターでないと装着できません。必ず「使用したいレンズのレンズ径」と合致する「フィルターの径」のものをご購入ください。例えば、私がよく使用している「RF50mm F1.2 L USM」というレンズの径は「77mm」ですので、フィルターの径も「77mm」のものを使います。

もし、PLフィルターを使用したいレンズが多く、径もバラバラである場合は、フィルター径を変更する「ステップアップリング」というアイテムがありますので、こちらの使用も検討されてみてください。

写真は「株式会社ケンコー・トキナー」の「ZX C-PLフィルター」です。これをレンズ前玉部分に装着します。製作しているメーカーは他にも多くあります。
フィルターをレンズに装着している様子。最後にフィルターを回転させることで固定できます。

フィルター部分を回転させることで透過量を調整

「PLフィルター」はフィルター自身が回転するような仕組みになっています。フィルターを回転させることでどの方向からでも偏光した光を除去できるようにしています。また、除去する量も調整することができるため、フィルターを回転させることで少し反射光も残す、といった使い方もできます。

PLフィルターを使うときは、カメラのファインダーや背面液晶などで見え方を確認しながら撮影するとよいでしょう。

フィルターによる反射光の除去が少ない状態。太陽光の反射により少し彩度が落ちています。
フィルターを回転させて目一杯反射光を除去した状態。青空がより青くなり、葉は本来の緑色に発色してくれました。

効果1 - 青空をより青く

反射光を除去する「PLフィルター」には様々な効果があります。

もっとも違いを確認できるのが「青空」です。青空も太陽からの光を反射しているため偏光しています。この反射光を除去することで「より青く澄んだ空」を写し取ることができます。

PLフィルター不使用の状態
PLフィルターを使用した状態。青空がより澄んた発色となりました。

後からパソコンなどで色の編集はしておらず、本当にこの色味で記録できるのがPLフィルターの魅力です。

効果2 - 紅葉をより美しく

秋になれば紅葉シーズンとなりますが、実は紅葉にも効果があり、より赤く、より黄色く発色してくれるようになります。コントラストも自然と上がるので印象的な写真が撮れます。

晴天時だと反射が多く白く写りがち。
PLフィルターのお陰で余計な反射がなくなり、美しい赤色として撮影できます。

効果3 - 水面やガラスの反射を除去

反射光が特に多く、普通に撮影してしまうと白く写りがちな「水面」や「ガラス」ですが、この反射光にも効果があります。PLフィルターで除去すれば水底が見えるくらいにまで除去することも可能です。ショーケースなどのガラスだと中身もしっかり写せます。

澄んだ水であれば水底も見えるほどに。上高地「田代池」。

効果4 - 植物では葉の反射光除去で本来の色へ

植物においては、特に「葉」の反射光の除去に効果的で、白く写ってしまう葉を本来の色へと戻してくれます。

バラは葉も美しい品種も多いので、晴天時でも綺麗に写し撮れるよう、PLフィルターを使ってみるのもおすすめです。

反射光が多い状態だと葉も白く写りがち。品種名「トレジャートローブ」。
PLフィルターで反射光を除去すれば、品種本来の葉の色で写せるようになります。

注意点1 - どの角度からの反射も除去できるわけでない

ここからはPLフィルターの注意点となります。

まず、PLフィルターで除去できる反射光は角度が決まっているという点を覚えておく必要があります。反射面に対して「30~40°」前後の光を主に除去しており、それ以外の角度の反射はあまり取り除けません。

つまり、太陽光を真正面または完全に背を向けるようなシチュエーションや、反射面に対して真正面に位置した場所で撮影してもPLフィルターは効果を発揮しません。特に太陽光からの反射を除去したい場合は、太陽の位置を確認し、ほどよく角度が付いた場所からPLフィルターを使用してみてください。

注意点2 - かなり暗くなるためブレに注意

PLフィルターは一部の光を除去することから、カメラのセンサー内に到達する光の量が極端に少なくなります。

つまり、光量を確保するために「シャッタースピードが遅くなりがち」になり、「手ブレ」「被写体ブレ」が大変起きやすい状況になっています。PLフィルターを使用しているときは写真が非常にブレやすいので、撮影前に必ず「シャッタースピード」が適切かどうか確認してみてください。シャッタースピードのほか、「F値」「ISO感度」でも調整可能です。

注意点3 - 寿命があります

実はPLフィルターには寿命があります。

これはフィルター内にある偏光膜が熱や紫外線などに弱く、経年劣化するためです。使用状況や管理方法にもよりますが、7年~8年程度の寿命と言われており、長く使用しているとフィルターが黄色く変色して色かぶりを起こす原因になります。

使用していない時は、直射光の当たらない場所に保管しておきましょう。また長年使用してきたフィルターがある場合は買い換えを検討してみてください。

注意点4 - 広角レンズ使用時には偏光ムラに注意

広い範囲を撮影できる「広角レンズ」に使用する場合は、反射光を除去できている箇所とそうでない箇所が分かれてしまう「偏光ムラ」が発生しやすくなりますので注意が必要です。

これは先ほど書きました「除去できる角度がある」ことに起因しており、広い範囲を撮影できる広角レンズはどうしても反射光の角度の幅も広くなるので、同じ画面内でも除去できない角度からくる光が入ってくるためです。

広角レンズ使用時には偏光ムラに注意して撮影に挑みましょう。

広角レンズで撮影した写真。右上の部分は青空が濃くなっていますが、左側は除去できずに色が薄いままです。

写真表現の幅を広げるPLフィルター - 作例

以上、PLフィルターの使い方や効果、注意点などを一通りお話させていただきました。

反射光の除去は、後からパソコンなどで処理できないことが多く、撮影時で対策ができるPLフィルターは大変強力な武器になります。写真表現の幅をぐっと広げるアイテムですので、ぜひ利用されてみてください。

品種名「ペーターフランケンフェルド」。逆光気味ですが、PLフィルターにより反射光を和らげ、葉の緑をそのままに写し撮れています。
晴天時であっても、赤い新芽がしっかり写ります。
当園から見える甲斐駒ヶ岳。夏の新緑をしっかり表現できました。
上高地「六百山」。少し紅葉が進んでいます。

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