イメージセンサーの大きさの違いと特徴
カメラの中には、レンズから入ってきた光を受け止める「イメージセンサー(撮像素子)」があります。このセンサーが光を検知することでデジタル画像を作っているのがデジタルカメラという機械です。
このセンサーにはいくつか「大きさ」の規格が存在しており、「フルサイズ」「APS-C」「マイクロフォーサーズ」など様々な大きさの規格があります。
センサーサイズの大小によりカメラの基礎性能に差がでるのは想像できるかと思いますが、実はセンサーサイズは「レンズ」の焦点距離や画角などにも影響してくる大変重要な指標となっています。
お使いの、またはこれから買うカメラのセンサーサイズの知識は様々な場面で活用しますのでぜひ覚えておきましょう。
センサーサイズの比較図
上図が現在メジャーなセンサーサイズの比較図です。
実寸ではなくてあくまで相対的な比較ですが、大小様々な大きさの規格があることがわかります。
- フルサイズ(フルフレーム)
- APS-C
- APS-C キヤノン
- マイクロフォーサーズ
- 1型
- 1/2.3型
※「フルサイズ」より大きな「中判サイズ(ラージフォーマット)」もありますが、プロ機で大変高価ですのでこの表では外しています。
フルサイズ(フルフレーム)
一般普及価格帯の中にあるカメラの中で、最も大きいセンサーサイズが「フルサイズ(フルフレーム)」です。
ちなみに「フルサイズ」は和製英語で、海外では「フルフレーム」の呼称が一般的です。
「フルサイズ」は、デジタルカメラが普及する前の「フィルムカメラ」で一般的に広く使われていた「35mm判フィルム」とほぼ同じサイズのセンサーサイズとなるよう作られています。
上図が35mm判フィルム(ライカ判)のサイズです。フィルム幅が35mmあり、写真として記録できる部分が「36mm × 24mm」となっています。「フルサイズ」イメージセンサーと同じですね。
上下にある小さい穴は「パーフォレーション」と呼び、フィルムを巻き上げるための穴です。この部分も含めて「35mm」ですので、「35mm判サイズ」といっても実際にセンサーサイズの高さが35mmあるわけではないことに注意してください。
フルサイズは高画質で暗所に強く、高機能
一般的に入手しやすいカメラの中で最もセンサーサイズが大きい「フルサイズ」センサーを搭載した「フルサイズ機」は、より多くの情報を取り込むことができることから、一般的に「高画質」であることが特徴です。細かい所も繊細に写り、美しいグラデーションを再現できるなど色乗りもよく、ノイズが少ない画像を作り出すことができます。
また、センサーサイズが大きいと多くの光を取り込むことができることから「暗所」にも強い傾向にあります。暗いところ(夜空や夜景など)であってもノイズが少なく綺麗に撮れるのがフルサイズ機の大きなメリットのひとつです。
フルサイズ機は大きなセンサーを搭載することから、カメラ全体として高機能になりやすい傾向にあります。カメラメーカーが本気を出して世に出すカメラになりますので、「高画質」「強い暗所耐性」のほか「高速シャッター」「正確かつ高速なオートフォーカス」「頑丈なボディ」など、プロが使用することも想定して様々な機能が搭載されていることが多いです。
フルサイズはボケやすい
さらに、フルサイズ機は「背景のボケ」がよりボケるようになります。
これはまた別の記事にて解説いたしますが、センサーサイズが大きいカメラは背景がよりボケる写真を撮りやすいという特徴があり、ひとつ下のサイズである「APS-C機」からさらなる美しいボケを目指してフルサイズ機へステップアップする方も多いくらいです。
逆にボケさせない方が難しい場合もあるくらいで、そのときはAPS-C機以下のサイズの方が有利なときもあります。
大きく重い、価格も高い
センサーサイズが大きいこと、それに伴って様々な機能を追加していることから、フルサイズ機は「高級機」として扱われることが多いです。
レンズを付けない「ボディ」だけの値段で、最も安い機種であっても「15万円」ほど、一般的には20万~30万円することが普通で、上を見れば100万円近いカメラもあります。
また、フルサイズ機は基本的に「レンズ交換式カメラ」、つまり「一眼カメラ(一眼レフ、ミラーレス)」であり、レンズはまた別途必要になります。
大きいセンサーに光を当てなくてはないけないので、必然的にフルサイズ機用のレンズは「大きく」「重く」なりやすく、そしてセンサーの高画質を活かすために高度な技術を惜しみなく投入しなくてはいけないため、レンズもお値段が高くなる傾向にあります。
このため「フルサイズ機」には憧れても中々手が出せないという方も多いかと思います。カメラ本体、レンズともに大きく重いので、遠出する際にも少し気が引けます。
しかし、お子さんなどよく動く被写体であっても正確に捉えピントを外さず(最近は犬猫、鳥の瞳検出までできます)、色飛びなく美しいグラデーションを写し取り、良くボケる背景など印象的な写真を撮るには最適なカメラであることも間違いありません。
ご予算が許せばぜひ一度体感していただきたいカメラです。
おまけ:レンズのフルサイズ(35mm判)換算はフルサイズ機につけたときにどうみえるかを表した指標
こちらも詳しくは別の記事にて解説いたしますが、レンズの商品解説を読むと「フルサイズ(35mm判)換算で ~ mm」という表記を見るかと思います。
実はセンサーサイズが異なると同じレンズであっても写る範囲(画角)が異なるという特徴があります。このため、「仮にこのレンズをフルサイズ機に付けたとき、どういった焦点距離(画角)になるのか」といった感じで、比較対象するときにこの言い回しをします。
フルサイズ機で写る範囲を基準にすることで公平に議論できるようにしているので、覚えておくとよいでしょう。
APS-C
フルサイズ機は高級機ですのでおいそれとは購入できないカメラたちでした。
しかし、フルサイズよりひとつ小さいサイズの「APS-C」センサーを搭載したカメラは、最初に購入してもらえるカメラとして普及を目指した機種が多く、このため比較的安価に購入できるようになっています。
Advance Photo System(アドバンスフォトシステム:APS)という、これもフィルム時代の名残で名前が付けられています。最後の「-C」はCサイズ(クラシック)という意味で、アスペクト比「3:2」のものです。規格としては「Hサイズ(ハイビジョン/16:9)」「Pサイズ(パノラマ/3:1)」というものもありますが、こちらは現在のデジタルカメラではあまり見かけません。
実は厳密な大きさの規定はなく、カメラメーカーによってAPS-Cセンサーのサイズはちょっとずつ違ったりします。
小型軽量で安い機種も豊富
「APS-C機」は、高価な機種もあることにはありますが、初心者・ファミリー層向けに作られた機種であればレンズセットであっても10万円以下で購入できる機種が多くあります。
フルサイズ機と比べて本体、レンズともに「コンパクト」かつ「軽量」な機種も多く、このことからカメラを始めたいという方が最初に手にするカメラであることが多いです。
小さい機種だとポケットに入りそうなものもあれば、フルサイズ機のような見た目をしたハイアマチュア向けの機種もあるなど、幅広い製品展開がされており、中古市場も活発で安く購入しやすいなど魅力が多いですね。
全体をくっきり写すのが得意
フルサイズよりセンサーサイズが小さいため、背景は少しボケづらいのですが、反面画像全体でピントがあっていてくっきり写る「パンフォーカス」という状態を作りやすくなっています。
例えば、イベントの際の集合写真など、全員にピントが合っていてどこもボケてない写真が必要な場合は、実はフルサイズ機より「APS-C機」の方がやりやすいです。フルサイズ機でもちゃんと設定すれば可能ですが、何も考えずに撮影すると後ろの人がボケてしまう可能性があります。
そのほか、風景写真や町スナップなど、あまりボカしたくないシチュエーションや、小型軽量を活かした撮影にはうってつけのサイズです。
望遠撮影も得意
フルサイズ機の解説の中でちらっとお話しましたが、センサーサイズが小さくなると画角に変化があり、より遠くを写しやすくなるという特徴があります。
重くて大きくて値段も高いフルサイズ機+フルサイズ用レンズより、小さく軽く安いAPS-C機+レンズの方が実は「より遠くまで写せる」ことが多いです。このように、広く写すことも遠くを写すこともできる「高倍率ズームレンズ」の真価を発揮しやすいセンサーサイズが「APS-C」の魅力でもあります。
レンズも超広角や超望遠などフルサイズ用だとどうしても大きく重くなりがちですが、APS-C用なら同じ画角でも小型軽量で安いレンズが開発されています。
画質、暗所耐性、ボケの量などはフルサイズより少し苦手
フルサイズよりセンサーサイズが小さくなるので、「画質」「暗いところでの撮影」「背景のボケの量」などはやはり少し性能が落ちます。
特に晴天下においては「白飛び」「黒飛び」などの色飛びが少々発生しやすく、夜景などではノイズが増えたり、背景のボケも少し少なくなります。また、動いているものに対して正確なピント合わせが難しい、早くシャッターが切れないなど機能面においてもコストダウンの箇所が見られます。
とはいっても最近の機種はこれらについても改善が進んでおり、実用においていきなり問題がでるほどではありません。正直、普通に撮影していれば特に大きな不満は感じないかと思います。あくまで「フルサイズと比較して」の話ですので、そこまで神経質にならなくても大丈夫です。
逆に「APS-C機」で何か不満がでてきたら「フルサイズ機」を検討するという考えで十分かと思います。
APS-C キヤノン
先ほどちらっと書きましたが、「APS-C」サイズには明確な大きさの規定がないため、実は同じAPS-C機でも機種によりちょっとずつサイズが違うことがあります。
特に有名なのは「キヤノン製APS-C機」で、他社のAPS-C機よりセンサーサイズが一回り小さいことが知られています。
とはいえ僅かな違いなので、これにより何か画質等に影響があるかというとそれは無いと思われますが、レンズの焦点距離をフルサイズ換算する際に計算式が変わることは覚えておくと便利です。
APS-C機に付けるレンズの焦点距離をフルサイズ換算するとき、通常は「約1.5倍」すれば換算可能ですが、キヤノン製APS-C機の場合は「約1.6倍」する必要があります。
マイクロフォーサーズ
APS-Cよりさらに小型のセンサーが「マイクロフォーサーズ」で、オリンパスとパナソニックによって策定された比較的新しい規格です。
縦横比が「4:3」の「4/3型」イメージセンサーを採用していることからこの名前が付きました。前身に「フォーサーズシステム」があります。
フルサイズやAPS-Cと比べて、縦横比のうち横幅が少し短くなっていますが、縦・横ともにおおよそフルサイズの半分(面積は約1/4)となっていることから、マイクロフォーサーズ用レンズの焦点距離をフルサイズ換算する際には、単純に「2倍」すれば大丈夫です。
例:マイクロフォーサーズ用25mm単焦点レンズは、フルサイズ用50mm単焦点レンズと画角が概ね同じになります。
さらに小型軽量で安価
APS-Cよりさらに小型、フルサイズからすれば1/4も小さくなっているため、さらに小型軽量なカメラが開発されています。レンズがセットになっても5万~7万円前後で購入できる機種もあります。
レンズも小型に設計できるため、カメラシステム全体で非常にコンパクトになります。重量もレンズ含めて600グラム前後と軽量な機種もあり、旅行などでもかさばらない携帯性が魅力です。
もちろん、レンズ交換式カメラとして販売されている機種もあり、レンズ交換の楽しみもあります。
さらに望遠撮影が得意に、野鳥などにも
センサーサイズが小さくなったことでさらに望遠撮影が得意になっており、例えばフルサイズ用では三脚がないと支えられないほどの大きさ・重量を持つ超望遠レンズ(焦点距離600mmなど)は、マイクロフォーサーズ用レンズならば同じ画角でも手持ちで軽々支えられるほど小型軽量なもので済みます。金額も雲泥の差で、云十万円の差がでることもあります。
このため、野鳥撮影をされている方の中には、超望遠が得意なマイクロフォーサーズ機を利用されている方も多いです。もちろん、レンズを交換することで広く撮ることができるようにもなりますので、画角に関しては非常に汎用性の高いセンサーサイズと言えます。
ボケを狙った撮影は苦手
反面、APS-C機よりさらにボケができにくくなっているため、ボケを狙った写真を撮るには工夫が必要で、場合によってはボケやすいレンズを別途購入しておくことも考えなくてはいけません。
ただ、画面全体でピントが合っている「パンフォーカス」を作り出したい場合には非常に適したセンサーサイズですので、小型軽量を活かして登山などで一緒に携帯しておくと美しい風景写真などが撮影できるかと思います。
暗い場所も苦手
センサーサイズが小さいため、多くの光の情報を取り込むことができず、暗所に対してはやはり苦手意識があります。感度を上げるとノイズが乗りやすく、夜景などには少し不利かもしれません。
1型・1/2.3型 など
センサーサイズとしては小さい部類に入ります。レンズ交換式カメラでの採用は少なく、レンズ一体型の「コンパクトデジタルカメラ」や「スマートフォン」などで採用されています。
画質や暗所耐性などは犠牲になりますが、とにかく小型軽量を突き詰めた製品に搭載されています。胸ポケットにも入ってしまうような小さいカメラもあり、常にバッグに入れておくなど常用カメラとしての利用が現実的になります。
ただし、ボケに関しては専門外となり、中々綺麗にボケさせることができません。このため、スマートフォンなどではAIやソフトウェア処理で「背景がボケたような写真に加工」する技術を搭載していることがあります。
逆に、これまでのセンサーサイズの中では最も「パンフォーカス」に向いており、何も考えなくとも背景も前景もしっかり写るので、この特性を利用した撮影を心がけるとよいでしょう。