フー ペルネ デュッシェ – 初の黄色四季ばら作出者を讃えたばら
ばらの原種の花色は「白」「赤(赤紫)」「ピンク」などが主流です。今では珍しい花色ではなくなった「黄色」という花色を持った原種は、実は非常に少なく、「ロサ フェティダ系」の品種と、一部の木香ばらやティーローズで淡い黄色を持っていたくらいです。
ばら本来の色として「黄色」はほとんど存在していなかった、まさしく幻の色でした。
ですが、現在の花を見てみると黄色の品種は多く見かけます。これは、ある人物が途方も無い苦労をして黄色の四季咲きばらを誕生させたからです。
その人物こそ、世界で初めて「黄色四季咲きばら」を作出した偉大な作出家「ジョセフ ペルネ-デュッセ(Joseph Pernet-Dicher)」です。
「ペルネ-デュッセ」は、鮮明な黄色の花を持つ原種「ロサ フェティダ ペルシアーナ(ペルシャン イエロー)」を交配に使い、長い年月を費やして初の黄色四季咲きばら「スブニール ド クロージュ ペルネ」を作出しました。この品種が世に出たことで、ばらの色にさらなる革命をもたらしたのです。
「スブニール ド クロージュペルネ」がばらの世界に与えた影響は計り知れません。白の名花「ヴィルゴ」などを作出したフランスの大育種家「シャルル マルラン」も「スブニール ド クロージュ ペルネ」を利用して多くの名花を誕生させています。
この「シャルル マルラン」が、偉大な先人「ペルネ-デュッセ」へと捧げた品種が今回ご紹介する「フー ペルネ デュッシェ – Feu Pernet-Ducher」になります。
「Feu」はフランス語で「故」を意味する形容詞ですので、直訳すると「故 ペルネ-デュッセ」になります。黄色ばら作出に多大な貢献のあったペルネ-デュッセを偲び、シャルル マルランによって作出、命名された思い出の品種です。
交配は「ジュリアン ポタン × マーガレット マグレディ」です。「ジュリアン ポタン」の交配を辿ると「スブニール ド クロージュペルネ」に行き着くので、「フー ペルネ デュッシェ」の黄色もクロージュペルネから受け継いでいます。
「スブニール ド クロージュペルネ」の誕生により、多くの黄色系品種が生み出されました。また、黄色のみならず珊瑚色のような複雑で深い色調を持つ品種も誕生しています。ただ、これら黄色系の品種の弱点として樹勢の弱さが懸念材料としてありました。これを改善させるため、強健種である「マーガレット マグレディ」を交配に使った品種が「フー ペルネ デュッシェ」です。「フー ペルネ デュッシェ」は初期黄色ばらの中でも強健な品種として誕生しました。
鮮明な黄色ではないのですが、当時としては珍しかった強健な黄色四季咲きばらは貴重な存在だったでしょう。本品種は花付きもよく、クリーム色のグラデーションがかえって上品なイメージを与えてくれます。細めのステムによって花は横に倒れ、風になびく枝先は情緒あふれる姿です。寒くなると、弁先に少し赤味がさすようです。
今となっては強健でさらに鮮明な黄色品種は多くありますが、初期黄色ばらが持つふんわりとした優雅な花にはやはり風情があります。古いながらも育てやすい品種名なので、その歴史に思いを馳せながら育ててみるというのも1つの楽しみかと思います。