カメラコラム

少し遠くに離れてから望遠で撮影するだけで映える写真に!

少し遠くに離れてから望遠で撮影するだけで映える写真に!

カメラで撮影する際、どれくらいの焦点域で撮影しているでしょうか。

広く撮影したい時は「広角域」、遠くのものを撮影したい時は「望遠域」で撮影しているかと思いますが、ではばらのような「近くにある被写体」に対してはいかがでしょうか。

表現は様々ありますのでこれが正解というわけではありませんが、ある大きな被写体を中心に据えたい場合は「少し遠め」な位置から「標準域より長い焦点距離」で撮影すると、余計な情報が入らず見せたい被写体にすっと目が行くような写真になりやすいです。

少し視点を変えるだけで全く異なった写真が撮れるようになりますので、ぜひ試してみてください。

少し離れた位置から望遠気味で撮影

ある程度近づける被写体、ここではばらをメインにいたしますが、カメラを持って撮影しようとすると自然と近づいて撮影してしまいがちです。特に、レンズの最短撮影距離より近づいてしまうとピントが合わなくなってしまうので注意しましょう。

スマートフォンなどのカメラ機能は元々広角気味(広く写る)である上にかなり近づけてしまうので、その感覚でズームレンズを広角のまま被写体に近づくとすると下記のような写真になりがちです。

焦点距離24mm , 被写体からの距離は45㎝ほど

ばらの品種は「イザベル デ オルティッツ」です。ハイブリッドティーの大輪花ですが、被写体にある程度近づいた状態で、ズームレンズを広角側へ移動させ広く撮影してしまうと、背景までも広く撮影されてしまうことで余計なものがたくさん写真内へ入ってしまっています。

中心の主役となるばら以外にも、別の品種の株だったり、支柱があったりと、そのほかのところにまで目がいってしまい、折角のばらが映えなくなってしまいます。

特に広角気味なレンズ構成となっている「スマートフォン」のカメラ機能を使う際によく起こりやすい現象で、あまりぱっとしない写真が撮れてしまいがちです。

焦点距離105mm , 被写体からの距離は70㎝ほど

では、こちらの写真はどうでしょうか。

主役となるばらにぱっと目が行き、背景部分も余計なものがなくすっきりしています。一目見て「ばらの写真(少なくとも花の写真)」であることがわかりますね。それ以外の情報は少ない状態ですが、情報が整理されているがゆえにより被写体を際立てくれています。

もちろん、被写体であるばらは同じ株です。では、最初の写真と何が違うかというと・・・

  • 被写体から少し離れた位置で撮影したこと
  • そこからレンズを望遠寄りに撮影したこと

違いはこの2点だけです。

ズームレンズで望遠寄りに撮影すると遠くを写せるようになります。遠くを写す、という言葉に惑わされがちですが、別の言い方をすると「目の前のある狭い範囲を拡大している」とも解釈できます。

つまり、望遠にすると被写体の周辺部という狭い範囲を拡大して写すことができます。これは逆に言うと、周辺の余計な情報が写真内に入りにくくなるということでもあり、情報が整理されてより被写体を際立たせ、すっきりとした印象的な写真となりやすくなります。

写真は引き算の法則があり、色々詰め込んだ写真より「様々な要素をそぎ落とした」写真の方が映える写真になりやすいです。あれもこれもと構図内にいれず、まずは主題となる被写体以外はなるべく写らないように調整してみてください。これだけでも写真の印象はかなり良い方向へ変化します。

さらに、望遠で撮影すると背景がよりボケやすくなるので、ボケを活かした表現もやりやすくなります。どうしてもF値を下げられない安価なズームレンズでボケを楽しみたい場合には有効な撮影方法です。

ただ、被写体に近い状態で望遠にしてしまうと大きく写りすぎてしまう場合がありますので、少し離れた位置まで下がり、そこからレンズを望遠にして撮影することで映り込む範囲を調整します。

私がばらを撮影する際には、大体「焦点距離50mm以上(35mm判換算)」、長いときには「焦点距離100mm近く」まで望遠にして撮影することもあります。さらに望遠にすることで周辺の余計な情報(例えば園内のホース、支柱、ケースなど写真には不要なもの)をなるべく少なくするほか、「圧縮効果」を狙って被写体であるばらにより注目してほしいときには、離れた位置から望遠で撮影していることが多いです。

最近のスマートフォンは複数のレンズを搭載していることがありますが、その場合も望遠レンズの方を利用されてみてください。

※圧縮効果:メインの被写体と背景の距離感が圧縮され、それぞれが近くにあるように錯覚する現象。望遠にすることでより起こりやすくなる。また、トリミングしても同様の効果を生み出せる。

作例

Canon EOS M5 , EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM , 焦点距離66mm(35mm判換算106mm相当) , 品種名「ロイヤルハイネス」
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II , M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II , 焦点距離100mm(35mm判換算200mm相当) , 品種名「ブレイリーNo.1」
NIKON D70s , AF-S DX Zoom-Nikkor 18-70mm f/3.5-4.5G IF-ED , 焦点距離70mm(35mm判換算105mm相当) , 品種名「リュータン」
Canon EOS R6 , RF 24-105mm F4L IS USM , 焦点距離60mm , 品種名「クレパスキュール」
Xperia 1 II , 焦点距離70mm相当 , 品種名「ロサブラクテアタ」

単焦点レンズの場合は「50mm」が汎用性高い

これまでは「ズームレンズ」を仮定してお話させていただきましたが、単焦点レンズでも同じことが言えます。

ただ、単焦点レンズはズーム機構がなく焦点距離は固定です。画角を変えるためには撮影者が動く必要があります。このとき、やはり広角寄りの単焦点レンズ(24mmや35mmなど)だとどうしても広く写りすぎてしまうので、花の撮影においては少し使い勝手が悪いです。

単焦点レンズを使う場合は、標準域である「50mm」が無難な選択になるかと思います。

もちろん、85mmや100mm付近の単焦点レンズをお使いいただいても大丈夫なのですが、「50mm」は寄れば大きく写せ、引けばそれなりに広く撮影できるなど汎用性が高く、花の撮影以外でも利用できる場面が多くあり、大変使い勝手がよい焦点域となっています。50mmは人の目と同じ距離感で自然な撮影ができますし、販売されているレンズも安価なものがありますので、単焦点レンズ最初の1本としておすすめさせていただきます。

50mm単焦点レンズを使った作例

Canon EOS R6 , RF50mm F1.8 STM , F5 , 品種名「ヘンリーネバード」
Canon EOS R6 , RF50mm F1.2 L USM , F4.5 , 品種名「イスパハン」
Canon EOS R6 , RF50mm F1.2 L USM , F5.6 , 品種名「シャルルドミル」
Canon EOS R6 , RF50mm F1.2 L USM , F7.1 , 品種名「マイチョイス」

トリミングで写真を切り取ってみよう

撮影した写真の一部を切り取ることを「トリミング」と呼びます。

トリミングすることで、撮影した後からでも画角の調整をすることができます。撮影時には気づかなかった不要なものを後から調整することはもちろん、逆に撮影時は少し広めに撮っておいてから後でトリミングして仕上げるという方法もあります。

あまり極端に小さく切り取り過ぎると画素数が減って画質が落ちてしまいますが、多少のことであればほとんど問題にならないので、積極的に利用してみたいところです。

トリミングを行えるアプリケーションは様々あります。パソコンで扱う場合の代表的なものは、Windows標準の「フォト」やmacOSの「プレビュー」機能、有償アプリなら「Adobe Photoshop」などが有名です。また、FacebookやInstagramなど写真を添付できるアプリだと、投稿時にトリミングする機能があることが多いので、こちらを利用しても大丈夫です。

Adobe Photoshopでのトリミング。投稿用に必要な部分のみを拡大して切り取っています。

当園ウェブサイト上の品種写真は、そのほとんどでトリミングをしており、その品種の特徴がしっかり表現できている部分が目立つように調整しています。

またトリミングすることで、後付け的に「圧縮効果」を狙うことも可能です。圧縮効果はあくまで遠近感の圧縮になりますので、画角を小さくすれば後からでも演出可能です。(※トリミングしすぎると画質が劣化することには注意)

撮影時に一発で決める!という意気込みも大切ではありますが(フィルムカメラ時代は特に意識していました)、デジタルデータとして写真が扱えるようになった現代、後から作品性を高めるという行為にも十分な価値がでてきました。帰ってからじっくり写真を調整することを念頭に撮影するのも、昨今のトレンドかと思います。

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