樹形図再考 – 2番~8番 の特徴と具体例 –
当ばら園の特徴でもあるこの樹形図。
2008年秋のカタログにて、ご紹介させていただいたのが初めてでした。(当時は村田ばら園八ヶ岳農場でした。)
前代表であった村田晴夫が考案したものですが、各品種を12の樹形図に割りふるのは非常に困難な作業でもありました。品種選択のご参考としていただいたり、樹形に関する理解の一助となりましたら、大変幸いに存じます。
樹形4番 オールドシュラブ型樹形
「4番」の樹形は、つるばらの最も一般的な樹形、「シュラブ樹形」とよばれるもので、日本の野ばら、オールドローズ類、シュラブローズ類の多くがこの樹形に分類されております。
枝の伸長により、小型の品種からかなり大型の品種までいろいろですが、シュートは斜め横方向に伸び、やがて弧を描いて下垂します。どちらかといえば一季咲き品種が多く、枝は曲げやすく、フェンスや壁面など、広くさまざまな植栽場所に対応しやすい樹形です。
扇状にこんもりとした樹形を形成し、自立する
樹形2番 自立株立ち散開状樹形
「2番」は「4番」とよく似ているのですが、少し主幹がしっかりしている品種に割り振られております。「ブラッシュダマスク」や「ブラッシュノアゼット」などが代表的な品種で、主幹がしっかりしているという性質上、どちらかといえば返り咲き品種が多い印象です。
これらもシュートは斜め横に伸びますので、シュート部分だけ見れば「4番」と同じように見えます。主幹がしっかりしている性質を考慮して、トレリスや窓辺など、やや高さのある構造物が植栽場所として適しています。
主幹がしっかりしているため、高さがある構造物に好適
樹形3番 クライミングローズ樹形
「3番」は「2番」のバリエーションといえ、「2番」のなかでも特に大型に育つ品種に割り振られております。「つるアイスバーグ」や「つるサマースノー」、「レーヌヴィクトリア」などが代表的な品種で、クライミングローズの多くがこの樹形に分類されています。
多くは少し返り咲きがあり、品種による差異はあるものの、伸長力がつよいため、大きな壁面や窓まわりなど、高さと広さ、両方かねそなえた植栽場所が適します。
より上方向に立ち上がるため、窓周りなど広い場所へ植栽したい
樹形8番 斜め上方へ株立ち – 開帳型樹形
「8番」は「4番」の樹形の、さらにビッグバージョンといえます。そのためこの樹形をもつ品種は春のみ開花するランブラーローズがほとんどで、「ポールズヒマラヤンムスクランブラー」や「トレジャートローブ」などが代表的な品種です。
主幹もある程度しっかりしており、新しいシュートは長く伸びて大きな弧を描きます。大型のドームや壁面、パーゴラなどお庭のメインを飾るにふさわしい、大きな構造物が植栽場所となります。
さらに大型のドームを形成し、パーゴラなどお庭のメインに活用できる
樹形6番 匍匐する枝を持つ 下垂横張り型
6番の樹形は分かりやすく、どなたにも最も判別しやすい樹形といえます。ロサルキアエ(テリハノイバラ)、ロサセンパヴィエンスなど匍匐タイプの原種の血を受け継ぎ、枝はしなやかで匍匐するように長く伸びます。
4番とともにつるばらの2大樹形といえるものです。
6番の樹形を持つ品種は「ウクライアナランブラー」といわれるランブラーローズに多く存在し、多くが一季咲きです。そのため伸長が大変強く丈夫で、低くて長さのあるフェンスにはもっとも適している樹形といえます。
アルベリックバルビエやフランソワジュランビル、ロサムリガニー、夢乙女などは代表的な品種です。また、いずれの品種も花付きが素晴らしく、枝がしなやかなのでフェンスだけではなく、壁面やパーゴラなど、高さのある構造物にも適します。
旺盛でトゲもしっかりある品種が多いため、慎重に品種選択をする必要はありますが、スペースさえあれば抜群の植栽効果を発揮してくれるのが、6番樹形の品種たちなのです。
6番の樹形を持つ品種がいろいろな面で使いやすいことはわかったけれど、そんなにスペースはない、という場合は、数は少ないですが伸長が控えめであったり、返り咲くタイプの品種も存在しています。ローブリッターは代表的なもので、またポールアルフ、シーフォーム、レッドキャスケード、宇部小町などは返り咲きも楽しめます。
また同じ6番でもちょっと雰囲気は異なりますが、のぞみやピンクスプレーは枝が放射状に散開し、石垣などに枝垂れさせたり、小さめのスペースに適した愛らしい小型つるばらです。壁際に作られた小さな花壇などにポイントとして取り入れると、繊細で大変美しい植栽となります。
6番の樹形ながらゆるやかな伸長力で返り咲きもある類い希な品種
樹形7番 斜め横方向に伸びる樹形
7番の樹形は6番より少し枝が太めでしっかりしている品種に割り振られております。匍匐性の原種の血を引きながらも、片親が大輪四季咲き種であったりと華やかでモダンな要素を受け継いでおります。
そのためお花も、6番の品種に比べると大輪であでやかな品種が多くなっています。シティオブヨークやアルベルティーヌ、ニュードーンなどが代表的な品種です。6番樹形の品種と同様、高い植栽効果を発揮してくれますが、トゲが多かったり、伸長旺盛なものがほとんどですので、植栽にはやはり慎重さが求められるでしょう。
四季咲き品種との交配がされていることが多く、枝は少し太く固め
樹形5番 ガリカ型樹形 半自立横張型
こちらは6番や7番とは出自が異なり、オールドシュラブ樹形である4番のバリエーション樹形となっております。4番よりさらに枝が細くしなやかな品種たちで、主にガリカローズの一部に割り振られております。
カーディナルドリシュリューやデュセスダングレームなど、該当品種はごく僅かですが、格別に美しい品種揃いです。6番の品種では大きすぎる、という場合には、ぜひ候補となさって頂けましたらと思います。春のみの開花ですが、溢れるように咲く姿は本当に、心に沁みて美しいと思います。
より枝が細くしなやかで、匍匐はしないまでも誘引の自由度が高い