ばら苗の手入れ

返り咲き性つるばらと四季咲きばらの管理の違い

返り咲き性つるばらと四季咲きばらの管理の違い

ばらには大変多くの品種が存在しますが、管理という観点からみますと、四季咲き性なのか、つる性なのか、いずれかに大別されます。言い換えればご自身の栽培品種がどちらのタイプなのかを把握すれば、おのずと適切な管理方法が導きだせることとなります。

「四季咲き性」「つる性」の詳しい違いは、以下の記事にて執筆しております。

四季咲きばらの種類 – 年中咲くばらの性質と系統

つるばらの種類 – つる状に伸びるばらの性質と系統

仮に四季咲き木立性タイプをAとし、つる性タイプをBとしますと、Aは剪定メインの管理であることに対し、Bは枝を伸ばして生かしてゆくという、管理上の大きな違いがあります。

しかしながら最近は、この四季咲き木立性ばらとつるばらの、中間のような性質を示す品種も少なくありません。そのような品種は返り咲き性シュラブとか、ショートクライマーといった区分で呼ばれることもあります。多くの修景ばら、イングリッシュローズもこれらの仲間です。

今回はこの混合型品種の管理について、考察を深めてみたいと思います。

四季咲き木立ばら
一季咲きつる性ばら
混合型

仮に四季咲き木立性ばらをAつる性ばらをBと仮定しますと「A+B」の品種も、基本はBの性質であると考えたほうが、無理がないと思います。本来ばらはつる性の遺伝子のほうが、優勢であるからです。

その前提の上で、よりA寄りなのか、B寄りなのかを判断する必要があります。

A寄り、B寄りの判断

つる性ばらの中でよりA寄りの場合、

  • 返り咲きが非常に多い(秋まで開花する品種)
  • 開花枝(ステム)が極端に長くならない

といった特徴があります。また、株元からのシュート(ベイサルシュート)にも蕾を持つようであれば、かなりA寄りであると判断できます。具体的には「フェリシア」や「ブラッシュ ノアゼット」「ミセス ジョン レイン」などが挙げられます。

その一方で

  • 株元からのシュートには花が咲かない
  • 開花から次の開花までの期間が長い
  • 全体的に伸びる傾向にある

このように感じられる場合はBの性質が強いと考えられます。こちらは「コーネリア」や「ルイーズ オディエ」「マダム アルフレッド キャリエール」などが代表例です。

もとの樹形を意識して自然な姿で整える

Aの性質が強い品種は四季咲きばらと同様の、剪定による管理ができます。

しかしBの性質を潜在的に持っているため、剪定は四季咲きばらのように同じ高さで行うのではなく、もとの樹形をそのままコンパクトにするようなイメージで、その品種本来の樹形を活かすように心がけたほうが情緒的な姿で楽しめるように思います。

多くは枝が少し枝垂れたり、弓状になったりするのではと思います。開花時は花の重みで、その傾向がより強くなります。この枝の湾曲こそ完全な四季咲きばらとの最大の違いですので、それを生かされるとよいと思います。枝が細めでしなやかな品種でしたら、トレリスなどへ誘引してみることもおすすめです。

本来の樹形が把握できるようになるまでは、少し年数がかかる場合もあります。最初は枝数が少なく、思うような美しさが得られないかもしれません。それでもすべてのばらは放射状に枝を発生させるものですから、そこは少し時間をかけてつきあってゆく気持ちも大切だと感じます。

剪定する場合も、可能な範囲でもとの樹形を活かすようにする方が本来のシュラブローズらしい咲かせ方ができます。
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一方でBとしての性質が強いと感じられる場合はできれば壁面等への誘引を考えたいものです。また通常のつるばら同様、花の咲かない長いシュートが伸びている場合は、途中でハサミを入れることはできるだけ避け、剪定、誘引の時期までは大切に保護するようにします。古い枝は剪定で側枝を整えつつ、新しい枝はできるだけ枝先のみの剪定として長く使用し、可能な範囲で水平気味に誘引しますと、通常のつるばら同様春には大変豪華な姿で楽しめるでしょう。

もちろんAの性質も持っているため剪定しても咲きます。考えようによってはどんな剪定でもそれなりに咲き、咲かせたい場所に枝先を持ってくるようにすればよいといえます。この場合も四季咲きタイプに行うようなバッサリとした剪定ではなく、もとの樹形は意識し高低差をつけたほうが自然な姿で、その品種本来の良さを演出できるように思います。

伸びる品種をコンパクトに管理する方法もよく頂く質問の一つですが、仮に花後に枝を刈り込むことで少しコンパクトに抑えることはできても、シュートが伸びる性質は変えられません。冬期の剪定でコンパクトにする、あえて鉢仕立てとして樹勢を抑える、といったある意味消極的な手段となりますので、やはり事前に枝の伸び具合を把握しおくことが重要と思います。

当サイト及びカタログで掲載しております「樹高」は、庭作りに於いて予定とすべき数字を掲載しています。到達すべき高さ、本来見込んでおくべき枝の長さで、植栽に使う際に無理なく自然な演出と楽しみ方ができる、品種毎の特性を踏まえた上での、目標とすべき数値です。

たとえば「ピエール ド ロンサール」は「樹高4m」の記載をしております。この品種は伸長力が旺盛で、生育が順調であれば数年で4m以上は伸びていくため、これだけ伸びることを予定に入れてスペースを確保します。花付きの良い品種なので確かに深く剪定しても開花はしてくれますが、この品種本来の良さ、伸びた枝に溢れんばかりの大輪花が咲く姿は、枝が伸びていてこそ楽しめる風景です。

枝の伸びる長さについては、樹高の数値を参考にしていただければと思います。

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