ばらに元気を取り戻す方法
「購入したときは元気な良い苗だったのに、だんだんと元気がなくなってしまった…」
「植え付けて2~3年は良い成長だったけど、最近は花も少ない…」
そのようなご相談をよくいただきます。
今回はいったん生育不良となってしまったばらの成長を回復させるために、心がけるべきことを考察してみました。
見直すポイントは土壌(根のはり具合)、日照、肥料の3点となります。
土壌、根のはり具合を見直す
根のはりは、植物の成長を支えるもっとも重要な要素です。
株元を持ってみてグラグラするようなら根のはりが弱いということになります。
特に鉢仕立ての方は、植え付け方に注意が必要です。人差し指、中指、薬指の3本の指で押してみて、土が深く凹むようでしたら柔らかい植え付け方となります。柔らかい植え付け方は根腐れの原因になり、合わせて生育不良を起こします。植え替えできる状況でしたらもう一度、粗さのある土でしっかりと固く植え付け直して下さい。
植え直しまでは無理でしたら、上から土をおさえ、凹んでしまった部分には新しい土を足して下さい。これだけでも、違いが出ると思います。
露地植えのかたは、通常土は硬くしまっているものと思われますから、逆に表土を小さめの熊手などで耕して空気の通りを良くし、(中耕)可能なら牛糞や腐葉土を漉き込まれるとよいです。冬なら少し多めの量を、生育期間中は控えめな量で。土壌によいバクテリアを増やし根の張りを促すことができます。
※コガネムシやカミキリムシの幼虫による食害が原因の場合はこれらの幼虫を駆除する必要があります。こちらに関しましてはまた別の対処が必要ですので、恐れ入りますがばらの栽培書、各種園芸書をご参照下さい。
日照
こちらは特に花つきに影響します。お花が咲かない方は真っ先に見直すべきポイントと言えるでしょう。
今回のコラムでは、特に株元の日当たりにも、ご注目いただきたいと思います。ばらは大きな木になれば、自分の樹冠で株元を暗くしてしまいますが、小さな苗木のうちから株元に日が当たらないと、生育が鈍ります。
鉢仕立ての方はできるだけ鉢にも日が当たる場所で管理なさって下さい。
露地植えの方も極力株元に日があたり、風通しのよい状態を作る工夫をしてみて下さい。伸びた枝葉で行えますし、すでに根も地中深くまで張っておりますから、問題はありません。(株元にカイガラムシが発生しやすくなりますから、その点は注意が必要です。)
露地植えの方はあまりにも日照が悪いと思われる場合は、移植が必要なこともあります。とくに密植になってしまうと生育の良い株のほうに、日照も栄養も取られてしまうもの。
一般地域の方は移植の適期でもありますから、思い切って場所を変える、鉢に取るなどの方法を検討なさってみて下さい。日照条件はまずまず、と思えるなら根が張るまでには時間を要するものと考え、花後の生育に期待してもよいと思います。
肥料
日照も、根の張りも特別悪くはなさそう、と判断できるなら単純に肥料の量を増やすだけで解決できることもあります。鉢植えでも露路植えでも何年かたつと土壌は痩せてしまいますので、人間が人為的に栄養分を補う必要が出ます。
肥料に関してはいろいろな意見があり、あげすぎは確かに枯死につながる危険もありのですが、かといって少なすぎても良い生育は見込めません。
一般の方の感覚からすれば、プロの人間が使用している肥料の量はかなり多いのではないかと感じます。「生育が悪いのは、単に肥料が足りないから」という意見を聞いたこともあり、一言でいってしまえば、確かにそのとおりです。
根に大きなダメージが出ている状態でなければ、今までより少し多めの肥料を置いてみて下さい。液肥の併用も効果的です。鉢仕立ての方はいきなり量を増やすことができませんので、施肥の回数を増やす方向で対処してみて下さい。
この場合も、ただ肥料だけよりは少しでも新しい土、新しい堆肥類(腐葉土や牛糞など)と併用されることがおすすめです。毎回でなくてもかまいません。
露地植えの方は冬期と花後、秋口などに、鉢仕立ての方は土替えのときに。この新しい土と堆肥類のパワーは絶大で、ばらに必要なバクテリアや微量要素の働きなどは、肥料単用では補えないものであるようです。
新しい土とは「ばらを育てたことがない土」のことであり、草花を育てていた土等でもかまいません。
時間
できうるケアをしたら、最後に一番ともいうべき重要なポイントをお伝えさせていただきたいと思います。
それは「樹勢の回復にはある程度時間がかかる」ということです。
季節や、ダメージの度合いでも異なりますが、いずれの場合でもすぐに結果が出ることはありません。半年くらいたってようやく、ということも珍しくありません。
それでもばらは大変再生能力の高い植物です。できることをしたら、あとはばらの回復力に委ねる時間が必要となります。その間は別の趣味を楽しまれるなど、ばらからは少し心を離すくらいでちょうどよいと思います。焦っていじりすぎることは、もっとも避けるべきことと感じます。
生育不良を起こすケースは本当にさまざまですので、すべてにあてはまるお答えとは申せませんが、少しでもご参考にしていただける部分がございましたら幸いです。
代表 – 姫野 由紀 著