HT種で「剣弁高芯」の花型を確立した歴史的名花 – オフェリア
ハイブリッドティー初の剣弁高芯咲き「オフェリア」
オフェリアはハイブリッドティ種の歴史を考える上ではずせない品種ですので、すでにご存じの方も多くいらっしゃると思います。
作出者のウィリアム・ポールはこの品種の交配親を明らかにしておらず、嵐の後、圃場を掃き清めたときに得られたばらの実から偶然発生したものと語られていますが、実際にはペルネ・デュッセの作品「アントワーヌ・リヴォワール」(1895年作出・当園扱い有り)の実生ではないかと推測されています。
アントワーヌ リヴォワール – Antoine Rivoire
ハイブリッドティーローズという系統を確固たるものとした「レディ・マリー・フィッツ・ウィリアム」の子どもで、この時点ではまだ高芯咲きではなく、少し丸っぽい花型をしています。
HT種が持つ剣弁高芯咲きの祖
オフェリアは美しい半剣弁高芯の花型を持ち、この品種によって現在私たちが目にするような、芯が高くて花弁が渦巻く、優雅なスタイルが確立されたと言われています。さらに「オフェリア香」と呼ばれる、ダマスクとティが入りまじった、華やかで上品な独特の香りをもち、この品種が長く愛される理由の一つにもなっています。
花付きが良く、極めて結実性が高かったことで交配親としてさかんに利用され、多くの名花誕生に貢献しました。著名な直系品種には「ディンティ・ベス」「ドレスデン」「コンテス・バンダル」などのハイブリッドティーローズの他、「フェリシア」「ペネロープ」などのハイブリッドムスクローズと他系統にまで強い影響を残しており、孫品種や枝変わりの子孫まで含めると膨大な数になります。また、かつては切り花用品種としても利用され、著名な枝変わり品種に「マダム・バタフライ」「ラプチュア」などがあります。
「現在の名花で、オフェリアを血を引かぬ品種はない」とまで言われるほどです。
オフェリアは現在も名花で、はじめは枝数が少ない傾向にあるものの、やがて樹形も整いたくさんの花が楽しめるようになります。初期成長の遅さに少し焦ってしまうかもしれませんが、オフェリア自身が持つ本来の樹勢は比較的強い方なのでじっくり育ててあげましょう。極淡い、ほんのりとした杏ピンクがこの上ない美しさです。
シェイクスピアの四大悲劇(ハムレット、マクベス、オセロ、リア王)の中でももっとも著名なハムレットの恋人にふさわしい、憂いと気品を今に伝える品種です。