名花物語り

戦前を代表する黄色ばらの名花 - ミセス PS デュポン

戦前を代表する黄色ばらの名花 – ミセス PS デュポン

戦前を代表する黄色ばらの名花「ミセス PS デュポン」

商品ページはこちら

戦前を代表する黄色ばらの名花です。またフランスの偉大な育種家シャルル・マルラン氏が初めてバガテル金賞を受賞した記念すべき品種でもあります。黄色の四季咲きばらは現在でこそ普通に目にすることができますが、1900年代初めではまだ幻の存在でした。

交配はオフェリアとレイヨンドールの実生にオフェリアとスブニール・ド・クロージュ・ペルネ、コンスタンスの実生が合わさったものとされています。

( Ophelia × Rayon d’Or ) × ( Ophelia × [ Constance × Souvenir de Claudius Pernet ] )

スブニール ド クロージュペルネ

スブニール ド クロージュペルネ

オフェリア

オフェリア

マルラン氏の目的としてはスブニール・ド・クロージュ・ペルネの黄色をさらに美しく発展させ、なおかつ花立ちのよい強健種を作り出すことにあったと推測されます。当時これほど鮮明な黄色ばらは他にはなく、狙い通りの素晴らしい品種が作出されたといえるでしょう。

子供もいくつかいて、直系品種で当園にて扱いのある品種は「マダム・コシェ・コシェ」と「アニー・ブラント」になります。

花付きは非常に多く、樹は半直立に形良くまとまります。樹勢も強健です。新芽の赤さが際立ちます。もちろん現在ではもっと花持ちが良くて、鮮明な黄色の品種が作出されていますが、当時はまだそのような品種などありません。スブニール・ド・クロージュ・ペルネは樹勢が弱めで強健さがあるとは言えなかったので、マルラン氏はもっと育ちのいい鮮明な黄色品種をだしたかったのでしょう。

この品種の登場で、薄い黄色ではなくもっと明るい黄色品種が作り出せると分かりました。スブニール・ド・クロージュ・ペルネと他の品種との組み合わせをどんどん変えていって、ゴールデン・ラプチュアーやゴールデン・セプターなどさらに黄色の品種が誕生していきます。そして、20世紀最大の名花と名高い「ピース」も誕生したのです。

ミセス・PS・デュポンの黄色はわずかに琥珀色を含む独特のもので、何か麦の収穫を思わせるような、懐かしい感じのする色調です。花はすぐに開いてしまいますが、中心の赤いおしべもまた魅力的です。つる性種もあり、大変花付きが良く咲き始めは爽やかなティの香りが漂います。

マルラン氏について

「ばらの育種では19世紀はじめから他国に先んじて改良を行い、優れた伝統をもったフランスが今日でもその地位を他に譲らないのはこのマルラン氏に負うところが多い。最近までフランスのばら界では元老ともいうべく78才で引退するまでこの書の中にのせた名品をはじめ多くのばらを発表していた。彼がこの30年間に発表した品種は130種もあるが、彼の作品には凡作がみあたらず、作品は固定化せず常に新しい何ものかをもっていたのは驚くべきことであった。」

(昭和31年発行 「原色薔薇洋蘭図鑑」株式会社保育社刊 より抜粋)

こちらの文献からも伺えますように、マルラン氏の作出花はいかにもフランスらしい高貴さと斬新さを併せ持ち、その独特の世界観は今もなお多くの人を惹きつけています。「バヤデール」「マダム・シャルル・ソバージュ」など、どちらかといえばやわらかな中間色の品種が多く、「近親交配」ともいわれる、いわゆる近親婚が多いこともあって樹勢に難があったり、片伸びしたりとくせはあるようですが、一方で「エディター・マクファーランド」のように非常に強健な品種も見受けられます。

マルラン氏の技術はメイアン氏や甥のコンブ氏らに引き継がれ、戦後のフランスのばら文化発展のために多大な功績を残しました。

関連記事一覧