レンズの焦点距離と画角の変化
カメラのレンズには必ず「焦点距離」が記載されています。
名前の通り「レンズ」ですので、外から入ってきた光をカメラのイメージセンサーへうまく屈折させて収束させる役割を担っています。
この焦点距離が変わると「写し取る範囲」、つまり「画角」が変化します。例えば焦点距離「24mm」で撮影すると非常に広く撮影でき、逆に「200mm」となると画角が狭くなり、より遠くの景色を拡大して撮影できるようになります。
このように撮影できる範囲を決める要素が「焦点距離」になります。焦点距離と撮影範囲を体感でもよいのでセットで覚えておくと、「この焦点距離ならばこれくらいの範囲が写る」ということが事前に分かるようになります。撮影手法やレンズの選定においても非常に役立つ知識ですので、ぜひ覚えておきたいところです。
レンズの焦点距離は製品名に書かれている
レンズの焦点距離は、ピントを合わせたとき、レンズ焦点の部分からイメージセンサーまでの距離を示しています。
カメラのレンズは凹凸レンズを複数枚組み合わせているのが普通なので、外見から単純に距離を求めることはできません。このため、製品には必ず「このレンズの焦点距離はどれくらいか」が明記されています。
こちらのレンズは「Canon RF50mm F1.8 STM」というレンズです。名前から焦点距離「50mm」であることがわかります。また、通常はレンズの方にも刻印されていますのでこちらからも確認できます。
このように、1つの焦点距離で固定されている(ズームできない)レンズのことを「単焦点レンズ」と呼びます。
こちらは「Canon RF24-105mm F4-7.1 IS STM」というレンズです。今度は「24-105mm」と2つ焦点距離が記載されていますが、これは「ズームレンズ」と呼ばれるタイプのレンズで、レンズのズームリングを回すことで「焦点距離を動かすことができる」レンズです。
このため、ズームレンズはそのレンズが持つ「最も広く撮れる焦点距離(広角端)」と「最も遠くを撮れる焦点距離(望遠端)」の2つを並べて「○○-○○mm」と併記するのが一般的です。
広く撮れたり、遠くを撮れたりと汎用性が高いレンズなので、カメラと一緒に販売されているレンズ(キットレンズ)はズームレンズであることが多いです。
焦点距離による画角の変化
焦点距離が変わると画角が変化するのは、以下のような図でよく説明されます。
焦点距離が短いと広く撮れる
被写体は「樹」を想定して、カメラのイメージセンサーとレンズ、その間の焦点距離と画角、撮影範囲についての概略図です。
この場合は「樹」全体がすべて撮影できています。いわゆる「広角」状態で、焦点距離は短めというイメージ図です。
焦点距離の数値が小さくなる(=距離が短くなる)と広く撮影できる、と覚えておきましょう。
焦点距離が長いと遠くを撮れる
今度はレンズが前に伸びて焦点距離が長くなった場合のイメージ図です。
この場合は樹の一部のみ撮影されています。いわゆる「望遠」状態で、イメージセンサーの大きさは変わりませんから、樹の一部が拡大されたような写真が撮影できます。
焦点距離の数値が大きくなる(=距離が長くなる)と遠くを撮影できる、と覚えておきましょう。
実際のカメラレンズは、この図のように一枚のレンズだけで構成されているわけではなく、複数枚の凹凸レンズを組み合わせて作られています。収差を取り除くために10枚以上のレンズが入ってくることも珍しくなく、そのため性能の良いレンズは高価で重くなっていきます。
より詳しいレンズの仕組みは以下のキャノン公式サイトで図解があります。
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/02.html
実際に確認してみよう!
理屈だけでは面白くないので、実際に焦点距離を変化させてどのように画角が変化するか確認してみましょう。
当農場から見える甲斐駒ヶ岳を被写体として撮影してみました。
※すべてフルサイズ(35mm判)換算しています。
「24mm」という広角から「2000mm」という超望遠まで確認してみました。焦点距離が長くなるにつれてどんどん画角が狭くなり、遠くを写せることが分かります。
人の目は大体片目で50mmの範囲を見ている
では、人の目はどれくらいの範囲が見えているのでしょうか。
カメラのように機械ではありませんから個人差はありますが、左右合わせて180~200度近くの視野を持っているようです。片目で大体140~160度前後のようです。
ただ、この範囲のものをすべてはっきり認識しているわけではなく、形や色などを判別できるほどよく見えているのは中心部分のみです。
この「人の目(片目)」ではっきりと認識している範囲は、レンズの焦点距離でいうと「50mm(フルサイズ換算)」に近い状態であることが知られており、50mmレンジで撮影すると人の目と似た距離感を持った写真として撮影することができます。
このため、カメラレンズの世界では「50mm前後」を「標準域」と呼び、この50mm前後をカバーするレンズを「標準レンズ」と呼んでいます。
また、人の目で左右同時に前を注視したときは、大体「35mm」前後の画角と同じくらいとされています。
人の視野(物への距離感)に似ていることから、「35mm」と「50mm」という焦点距離のレンズ(特に単焦点)がたくさん開発されており、ひとつの基準となっています。特に「50mm」前後を標準域と呼ぶことはかなり一般的となっていますので覚えておくとよいでしょう。
焦点距離と画角を意識して撮影してみよう
世の中には様々な焦点距離を持ったレンズが販売されています。
明確な基準があるわけではありませんが、一般的に
- 超広角 – 大体20mm前後
- 広角 – 50mmより短い
- 標準 – 50mm前後
- 中望遠 – 80mm前後
- 望遠 – 大体100mm以上
といった呼称で分けられることが多いです。(あくまで目安)
特にズームレンズをお持ちの方は、ぜひ撮影する際に「焦点距離」について確認してみてください。自分を移動させたり、カメラの位置を調整したり、焦点距離を様々変化させることで同じ被写体でも全く異なる絵がでてきます。
デジタルカメラは画像もデジタル情報として扱っているので、フィルムのように何枚撮影しても追加料金はかかりませんし、かさばることもありません。
とにかく思いついたことはすべて試してみるくらいの勢いで撮影していくと、思わぬ発見もあり、撮影の技術もどんどん上がっていくようになります。
センサーサイズによって画角が変わる
今回は特に深く触れていませんが、実はカメラのセンサーサイズによって、同じ焦点距離でも画角が変わるという現象が発生します。
この記事で書いている焦点距離は「フルサイズセンサー」を基準にしていますが、「APS-C」や「マイクロフォーサーズ」になると、同じ「50mm」の焦点距離でも画角が異なっていきます。
このイメージセンサーのサイズによって異なる画角の差や計算式については、別の記事にて詳細を書きたいと思います。
一言で書くと、「APS-C」の場合はレンズに書かれている焦点距離の「約1.5倍」、「キヤノン製APS-C」の場合は「約1.6倍」、マイクロフォーサーズの場合は「2倍」すればフルサイズ用と大体同じになります。これを「フルサイズ換算」と呼んだりします。