ばらのシュートピンチのやり方
オールドローズを含むつる性ばらや原種ばらのシュートは、翌年の開花のために大切に伸ばしておくことが基本でシュートピンチは必要ありません。近年多く見られる返り咲き性のシュラブローズも同様で、シュートピンチを行う必要性は薄いでしょう。ピンチをしなくとも、問題なく枝が伸びていきます。
しかし、四季咲き木立ばらの場合は対応が異なります。ハイブリッドティーローズをはじめとする四季咲き木立性ばらの太いシュート、特に株元付近より発生するシュートを「ベイサルシュート」と呼び、これらは放置すると必ずほうき状に蕾をつけ、枝の成長を止めてしまいます。
この状態になると、枝先で栄養の分散が起こり、またほうき状に枝分かれした部分からは新しい枝が発生しづらく、細い枝のまま成長が止まってしまいます。新しい葉の展開も少なくなるため、光合成の効率も落ちてしまいます。折角の有望な開花枝の生育がこれ以上見込めなくなってしまい、その年の秋の開花、さらにベイサルシュートを下支えとした来年以降の開花状況に大きく影響してしまいます。
ベイサルシュートはその年の秋の開花だけでなく、来春以降の開花を支えるための土台となり得る重要な枝です。優先して栄養が送られ、太く立派な枝となるベイサルシュートの生育が鈍ると、来年以降の開花数や質にまで影響してしまう可能性があります。
▲ほうき状に蕾をつけてしまった枝
もちろんほうき状になって花が咲いたからといって枯れるわけではありませんし、ばら公園などでは少しでも多くの開花を得るために、あえて咲かせている場合もあります。
しかし一般的な栽培では、ベイサルシュートは来年以降の有望な開花枝であるため、蕾が小さい内にピンチ(枝先をつまむこと)をかけ、枝の成長を止めないようにします。
シュートピンチのやり方
蕾はつまめる大きさのときにピンチ
小さな蕾が確認できたらシュートピンチの適期です。枝の成長を枝先で止めてしまう「開花」を抑制することが目的になりますので、” 蕾が確認できるまで ”はそのまま伸ばしておきます。
蕾はつまめる大きさのときにつまむことが理想となります。蕾に栄養が行く前につまむことで、枝の成長が促進され、より充実した開花枝とすることができます。
枝が柔らかいうちに行なうことがポイントです。柔らかい枝は芽吹きが非常に早く、容易に枝が再生して生育が再開されます。また、枝の太さは元の枝と同等のものが得られ、樹の勢いもよく、多くの葉が展開されることで光合成も行なわれ、秋に向けて充実した枝を作ることができます。夏剪定を行う際も、多くの充実した芽が残ることとなり、剪定位置を広く選ぶことができるようになります。
株元付近にある、太く充実したベイサルシュートの芽は休眠した状態になりますので、これを冬剪定の位置として決めることも容易となります。ここまでくれば来年の開花も問題なく得られるようになります。
これより蕾が大きくなってしまい、指のみではピンチが難しくなった場合は、鋏を使い葉をひとつ付けて切ることで対処できます。
ほうき状になってしまった場合
指先でつまめる柔らかさのうちに行うのが理想ですが、もしほうき状になってしまった場合は写真を参考に、Y字型になるようにカットしておきます。
株元に近い下の2枝を残し、真ん中のほうき状になった部分を切り取ります。残った枝の枝先を少し剪定することで次の枝の生育を目指します。
枝分かれしていない部分まで切り戻す方法もありますが、太く固くなった芽は再生が遅れがちで、場合によっては新しい枝がでてこないこともあります。このため、分岐した若い枝を2本程度残し、再生を促しつつ枝を作っていくことで確実に生育を再開させます。
株元付近の芽は引き続き休眠状態が続きますので、これで冬剪定時の芽の確保も可能になります。
一般平地での場合ですが、9月中旬くらいまでシュートピンチをつづけ、10月以降は枝の充実のためにも開花させると良いかと思います。ピンチ後の枝は大きく枝分かれすることがなく、数輪の房咲き状態で開花するようになりますので、栄養の分散も起こらず、秋の適度な気温もあって立派なお花を楽しめるようになります。
一般平地で栽培されている方は、この時期に夏剪定も行なわれるとよいでしょう。徐々に気温が下がっていく気候となる秋は、花弁が増え、香りも強く長く持ち、花色もより発色が良くなるなど、場合によっては春以上の立派なお花が楽しめます。開花までの日数を逆算し、10月中旬以降の開花を目指して行なう夏剪定は、夏が高温多湿となる日本の気候において有効な管理方法で、シュートピンチはこの夏剪定時に栄養豊富な芽をより多く確保して剪定位置を選びやすくすることも目的とします。シュートピンチと併用し、より意欲的な剪定を施したいところです。
シュートピンチは主にハイブリッドティーローズ、フロリバンダローズ、大輪のティーローズなど太いベイサルシュートを発生させる品種に有効な管理方法であり、もともと花房の大きいポリアンサローズやミニチュアローズでは不要です。
ただミニチュアローズでも大型の品種は太いベイサルシュートを発生させることがあるため、そのときはシュートピンチも有効であると思われます。
代表 – 姫野 由紀 著