ばら苗の手入れ

肥料の与え方

肥料の与え方

栽培に関するお問い合わせの中でも、肥料についてのお問い合わせは特に多いもののひとつです。

肥料はばらの生育や良い開花のために欠かせないものですが、どの時期にどれくらいの量を与えればよいかといったことは土壌や苗の生育具合により異なるため、ばらの栽培管理の中でも判断の難しい分野といえるでしょう。

当方は全て鉢仕立て苗での出荷ですので定期的な施肥は欠かせません。すべてのお庭で該当するわけではないと思いますが、以下の記述が肥料管理の一助となれば幸いです。

土壌改良材と肥料の違いを把握して

「冬期の元肥として乾燥牛糞や腐葉土をたくさんすきこみました。」といった言葉をお聞きすることがありますが、牛糞や腐葉土は微量に肥料分を含むものの、肥料とは本質的に異なるものです。(特に動物性堆肥は植物性堆肥より肥料分が多めです。)

牛糞や腐葉土などの堆肥類は土壌をより豊かに、良好な状態にするための素材とお考え頂き、実際に植物を生長させるためには窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)その他マグネシウムなどの微量要素が必要であり、それらが人為的に配合されたものが肥料として市販されています。

かつては油かすや骨粉、過リン酸石灰などが肥料の主流で、これらは分解が遅いため、芽出しの頃に効かせるには12月下旬頃の施肥が望ましいとされていました。いわゆる寒肥といわれるものです。

しかし最近はそれら以外にもたくさんの肥料が販売されているため、必ずしも寒肥にこだわらなくても良い状況になってきました。3月の芽だしの頃に、緩効性の肥料と速効性の肥料とを組み合わせても良いし、しっかり寒肥を施された場合は御礼肥まで据え置くことも可能でしょう。

肥料は生育期間中(一般平地なら3月から10月)は常に穏やかに効いている状況が望ましいので、当方では「花ごころ」などゆっくりと長く効くタイプの肥料をベースとして、芽出しの時や鉢まししたとき、満開時などに、それよりは早く効き目が現れる「ゆうき」を併用して鉢内に置き肥しています。

庭植えのHT種の成木なら「花ごころ」を20粒程度冬の間に株の周りに施しておき、2月下旬~3月上旬ごろ「ゆうき」を紙コップ1杯くらい、さらに追加して施肥するといったところです。

花ごころ ゆうき

ご家庭では「ゆうき」単用でも対応できます。ほどほどの量を回数多く与えることが失敗のない、かつ効果的な方法です。特に鉢栽培の方は一度に多量の肥料を施すことができませんので必然的に回数多く施すことになります。開花後や花付を良くしたいときは液肥の併用も効果的でしょう。

お礼肥はシュート発生のために最重要の作業

開花後は人間と同様ばらも大変疲れていますので、体力の回復のための施肥は欠かせません。お礼肥といわれますが、6月に施すものはシュートの発生を促す上でも特に重要です。

お礼肥は「満開時」に与えます

お礼肥は花が終わってから施すものと思われがちですが、実際には開花中に与える方が効果的です。肥料は置いた次の日から効くというものではなく、分解されて根から吸収される状態でなければ効いてこないからです。満開時に追肥すれば、花が終わった頃に肥料が効き始め、肥料切れの期間を短くすることができ、病気の発生も抑えることができます。もちろん、開花している花に影響はありません。

また、肥料を効かせるためには水分も必要ですから、シュートの発生がおもわしくない場合など、施肥量の他に乾燥気味の管理になっていないかチェックすることは大変重要です。

水分と健全な根の働きがあってはじめて良好な肥料吸収が可能になります。

その他、熱帯夜がなくなる9月からもばらはさかんに成長し始めますので、8月下旬から9月上旬頃の施肥も重要かと個人的には思います。秋に開花のないつるばらも、冬までにもうひと伸びさせることができます。

肥料あたりの特徴

肥料は気温が高くなるほど分解が早くなります。肥料当たりをおこすと芽吹いた芽が黄色くなり、枝葉全体も急に黄ばんで元気がなくなり、やがて溶けるように株に元気がなくなって枯死していまいます。

比較的早く進行するのが特徴ですので、急にこのような症状が現れたら、まったく無肥料の土に植え替えるか、それが不可能なら肥料はただちに取り除いて下さい。それでも枯死に至ることが多いので、欲ばって多量に施すことは禁物です。

固形で売られている肥料がくだけて粉々になった場合も、分解が早まりますので出来れば使用は避けて下さい。 施しすぎは危険ですが、かといって少なすぎても充分な効果が期待出来ないので悩ましいところですが、このあたりは毎年毎年少しずつ量を加減しながら経験で培うしかない部分といえます。

根は張っているようだがシュートも出ず、開花の質も量もいまひとつというなら間違い無く肥料が足りていないと思われますので、昨年よりは多くしてみよう、といった気持ちで日々ばらに向き合って頂けましたらと思います。

代表 – 姫野 由紀 著

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