ばらを管理する上で、頻出する単語・用語について解説します。
用語集 – サ行
サイド シュート
シュートのうち、主幹枝の途中から発生するシュートのこと。若い枝で栄養が優先的に送られてくるので、勢いのよいシュートは大切に保護します。
サッカー
枝から出る新しい枝のこと。ランブラーローズや挿し木苗ではよく株元から発生し、掘りあげて新しい苗木として育成することもできます。サッカー(sucker)は英語で「吸い取る」という意味で、台木から出た枝に対しては、接ぎ木した本来の品種へ向かうはずの栄養を吸い取ってしまうので見つけ次第すぐに除去します。
四季咲き(しきざき)
一定の温度があれば必ず安定して開花する性質。一年を通して、温度さえあれば何度も繰り返し開花します。また、剪定により開花調整が可能で、開花までの日数を大まかに計算することも可能です。
「四季咲き木立品種」と「返り咲きつる品種」は開花や枝の伸び方などの性質が根本的に異なるため、当園では厳密に分けて表記しております。「返り咲き」と表記がある場合はすべて例外なく「つる性」として扱い、「四季咲き」と表記がある場合は完全四季咲き木立品種を指し、原則つるとしては扱いません。(例外的に小型つるばらとしても扱える四季咲き品種があります)
秋まで安定して返り咲きがあるつる性品種は「返り咲き」と区別して「繰り返し咲き」と表記しております。
ステム
花枝のことです。主幹となる枝から伸びてきた、花を付ける枝のことです。ステムの長さは品種ごとに異なり、最も短いと言われている品種が「モッコウばら」です。逆に、長い品種は「つるブルームーン」などです。ステムが短いと主幹と花との距離が短くなり、構造物との一体感が出やすくなるため、アーチなどの小型な構造物にはステムが短い品種が適しています。ステムが長い品種は大きなパーゴラや壁面など、花が構造物から離れていても違和感がない場所へ植栽します。
※モッコウばらは確かにステムが短いですが、樹型的にアーチには不適な品種です。
スパイラル
花の中心から花弁が巻かれ、渦巻きのような形になる花型のことです。ハイブリッドティーローズに多く見られます。
生殖生長(せいしょくせいちょう)
花芽を分化、発達させて開花、結実して子孫を残そうとする生長のこと。反対に根を張り、葉を展開させ、茎を伸ばすなど、栄養器官を発達させ植物としての骨格を作る生長を「栄養生長(えいようせいちょう)」呼びます。
ばらは「栄養生長」と「生殖生長」を交互に、それぞれの時期が重なりながらこれらを繰り返して育っていきます。特に四季咲きばらでは何度も「生殖生長」を起こし春以降も温度があれば開花します。一季咲きばらは、春に「生殖生長」を起こし開花した後は、「栄養生長」のみを行います。そのため、つるを長く伸ばすことができます。一方で「生殖生長」が多い品種ほど、背丈が低く枝が伸びない傾向にあります。
シリンジ
霧状にした水を、葉の表裏にかけることです。葉水などとも言われます。水を苦手とする葉ダニへの対処法として最も活用できる手段です。霧状よりもシャワーでしっかり洗い流すとよいでしょう。高温時でしたら病気の原因となることはありません。
シュラブ / シュラブ樹形
シュラブ(Shrub)とは、低木、灌木といった意味で本来樹形をさして使われる呼称ですが、ばらの世界では他のどの系統にも含めにくい品種全般に使われています。いわゆる「その他」という扱いです。
多くがつる性で、野ばらのようにドーム状の樹形をもつものからランブラーローズのようにかなり横張りに長く枝を伸ばすもの、木立状に近いものなど一様ではありません。イングリッシュローズなどもこの系統に分類され、近年作出の品種は多くが返り咲き性を持っています。しかし他のつるばらの系統と同様、枝は弧を描くように伸びますので、枝のカーブを生かした仕立てを心がけたいものです。
新苗(しんなえ)
接ぎ木や芽接ぎを実施後、数ヶ月して穂木からでてきた新芽がある程度成長した際に販売される苗の形態です。植物として産声をあげたばかりの苗のことを言います。その性質上、販売時期は4月~6月ころに限定されます。四季咲き品種や、返り咲きのあるつる性品種は開花することにより枝の成長を止めてしまうので、新苗の場合は枝の充実を図るため、秋まで蕾を除去する「摘蕾」を行い株の成長を促すようにします。
一からばら苗を育てたい方におすすめです。その後どのように成長させるか、自由に調整できます。すべての枝が新しいため、シュートの出も良く、順調に育っていく姿を見るのは代え難い嬉しさです。
シュート
栄養が優先的に送られる、勢い良く出てきた新しい枝のこと。株元から発生する「ベーサル シュート」と、枝の途中から発生する「サイド シュート」があります。単に「シュート」と言う場合は「ベーサル シュート」のことを指していることが多いです。
シュート、特に「ベーサル シュート」が発生しているということは株が元気である証拠で、開花数を増やしたり風景を形作るための大切な枝です。ばら栽培において、このシュートを元気よく発生させられるかどうかが1つの大きなポイントです。
新梢(しんしょう)
新しく発生した柔らかい枝全般をさします。シュートと似た意味を持つ言葉です。シュートやベイサル シュートは特に重要な新梢といえます。
スタンダード仕立て
通常、接ぎ木や芽接ぎで使用される台木は数㎝程度の状態で使用されますが、あえて台木を長くしたまま先端で接ぎ木や芽接ぎをかける仕立て方。長い1本の台木を利用することで、傘のような形に仕立てることができます。台木の長さは生産時にある程度調整できるので、品種により接ぐ高さを調整します。
台木部分が通常より長くなるため、途中から台芽が発生しやすくなっています。常に台芽かきを実施し、接ぎ木した品種を枯らさないような管理を心がけます。日本では一般的に「野ばら(ロサ・ムルティフローラ)」がスタンダート台木として用いられます。枝がしなやかで伸びる品種を利用し、しだれ桜のような仕立て方をしたスタンダードを「ウィーピング スタンダート」と呼びます。
スタンダート仕立てにする場合は接ぎ木する品種選択も大事です。四季咲き品種の場合は横張りのものや、枝がしなやかな品種などを利用すると美しくなります。(例:「グリーン アイス」「アイスバーグ」「ソフィーズ パーペチュアル」など)
剪定(せんてい)
樹木の枝を切り、樹形を整えたり、開花を調整したりすること。庭木の手入れ方法として一般的に普及しており、ばらにおいても適用されます。剪定の方法により樹や花の充実を図ったり開花などを調整できるため、重要な作業です。
特に「四季咲きばら」では、良い開花を得るために大変重要な作業といえます。一方で、つるばらの場合は剪定をすると開花枝を失いますので、より美しい開花を得るための「整枝」と考え、できるだけ枝を長く使うことが基本となります。
側蕾(そくらい)
1つの枝に1つの蕾を持つ「一茎一花(いっけいいっか)」のばらでも、メインとなる蕾の足元に2~3つほど蕾を付けることがありますが、この蕾のことを「側蕾」と呼びます。開花数は増えますが、花が小さくなったりすることもあるため、場合によっては摘み取るなどの作業をします。