サカタのタネ 園芸通信「バラに歴史あり」原文コラム

サカタのタネ様「園芸通信」誌上にて、「ばらに歴史あり」の標題で2013年1月号から12月号までの1年間、連載を受け持たせていただきました。そしてこのたびサカタのタネ様のご快諾により、当方のサイト上での掲載が可能となりました。

誌面では文字数の制限があるため適宜編集していただきましたが、サイト上では文字数の制限を受けないため、この機会をお借りし原文もしくは一部加筆訂正した文章にて、掲載させていただきます。

連載開始にあたって著者よりごあいさつ

幼い頃から絵を描いたり手芸をしたり、何かを自分で作るのがとても好きな子供でした。特に花と鳥は大好きで、両親が買ってくれた図鑑のセットも、植物と鳥類の図鑑が一番ボロボロでした。植物も比較的早くから自分で育てていて、最初はかすみ草やゴデチャ(ちょっと珍しい子供ですね)などの草花が中心でした。

10歳の頃、熊井 明子先生の書かれたポプリ作りの本が出版され、一気にばらへの情熱が高まりました。いろいろなばらを乾燥させては色彩の出方や香りの残り方などを確認したり、品種ごとに異なる香りを楽しんだり、ばらへの興味の原点がここに詰まっているような気が致します。

さらにのちの村田 晴夫との出会いにより、今度は花の美しさや香りを愛でるのみならず、風景として生かしてゆく方法を学ぶこととなりました。

数ある植物の中でも特に人間との関わりが深いばらは、何か特別なはからいがあってこの世に存在しているように、わたくしには思えます。その神秘、魅力を微力ながらもお伝えし、この豊かな世界を皆様と共有できましたら本当に嬉しく思います。

歴史を彩る伝統のばら 赤ばらの祖-ガリカローズ

歴史を彩る伝統のばら 赤ばらの祖-ガリカローズ

ガリカ・ローズは現存するばらの中で最も古くから栽培記録の残る系統で、古代のローマ時代、一世紀ローマの博物学者プリニウスが記した「博物誌」にも、「燃えるような赤いばら」としてその存在が示されています。遺伝学的には赤ばらの祖先とされ、実際この系統には赤や紫の花色を持つ品種が多く存在します。つるばらとして大変使いやすい品種が多く、当園でもよくおすすめしています。

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神秘的な伝説が残る 白ばらの祖-アルバローズ

神秘的な伝説が残る 白ばらの祖-アルバローズ

赤ばらの祖であるガリカローズと双璧をなす白ばらの祖、アルバ・ローズ。聖母マリアがヴェールをかけたばらは白いばらになったという伝説も残る神秘のばら、15世紀イギリスで起こったばら戦争では、ヨーク家の紋章であったことも有名です。現在においてもアルバローズはその清らかな花容や爽やかな香り、青みを帯びた葉など、その独特の個性で多くのばら愛好家たちを魅了しています。

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いにしえの香を現代に ダマスクローズとその交配種

いにしえの香を現代に ダマスクローズとその交配種

ばらの香の代表ともいえるダマスク香。現在もばらの精油はこのダマスク・ローズから採取されています。ダマスク・ローズはガリカ・ローズとロサ・フェニキアもしくはロサ・モスカータの交雑により生じたものと推測され、現在では原種とは考えられていません。このダマスク・ローズと、これにロサ・キネンシス(庚申ばら)が交配されて出現したとされるブルボン・ローズに焦点をあててみたいと思います。

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激動の時代に咲いた華麗なばら ケンティフォリア、モス

激動の時代に咲いた華麗なばら ケンティフォリアローズ

ケンティフォリア・ローズとモス・ローズは、共にヨーロッパで特に人気の高い系統で、多くはオールドローズらしい幾重にも重なり合った花弁と豊かな香りに恵まれています。モス・ローズはケンティフォリア・ローズの突然変異により17世紀の終わり頃に生じたとされていますので、近縁種と言えます。今回はこれらの系統の魅力と庭園素材としての使いこなしに焦点を当ててみたいと思います。

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四季咲き革命をもたらした東洋のばら ティー、チャイナとその祖先

四季咲き革命をもたらした東洋のばら ティー、チャイナとその祖先

完全な四季咲き性と花付きの良さ、優雅な雰囲気などで現在も人気の高いティー・ローズとチャイナ・ローズ。これらはすべて中国原産の庚申ばらの仲間が起源となっています。いずれも近縁種でよく似た品種達ですが、花色の傾向や樹形などが少し異なります。今回はばらが四季咲き性を獲得するに至った経緯とその起源である中国のばらたちの魅力にせまってみたいと思います。

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返り咲くつるばらとして現在も活躍 ノアゼット、ハイブリッドムスク

返り咲くつるばらとして現在も活躍 ノアゼット、ハイブリッドムスク

可憐な花容と返り咲き性で人気のノアゼット・ローズとハイブリッドムスク・ローズ。それぞれ家庭用のつるばらとして現在も広く愛培されています。これらはロサ・モスカータに庚申ばら(ロサ・キネンシス)などを交配して生み出された系統で、特にノアゼット・ローズは古くから知られています。一方でハイブリッドムスク・ローズは20世紀に入ってから確立した系統で多くは3mほど伸長し、枝葉、花の印象も現代のばらにより近くなっています。

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四季咲き大輪ばら誕生へ、育種家たちの夢と情熱 ハイブリッドパーペチュアル

四季咲き大輪ばら誕生へ、育種家たちの夢と情熱 ハイブリッドパーペチュアル

これまで西洋の原種系ばらを中心に、ばらの交配の歴史をたどって参りました。育種家たちが目指した究極のばらのスタイルといえばそれはやはり四季咲き大輪ばら、すなわちハイブリッドティ ローズ。今回はその前段階にあたる系統、「ハイブリッド パーペチュアル ローズ」を取り上げてみたいと思います。四季咲きばら誕生へと向かう課程の最終段階ともいえるこの系統には、ひときわ個性的で魅力的な品種が数多く存在しています。

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ハイブリッドティーローズの誕生によせて

四季咲き大輪ばら誕生へ、育種家たちの夢と情熱 ハイブリッドパーペチュアル

前回ご紹介した「ハイブリッド パーペチュアル ローズ」の確立で、人類は大輪の華麗なばらを手にすることができました。しかし、この系統は多くがつる状で返り咲きも不規則、品種によってはほとんどない場合もありました。完全な「四季咲き大輪」を求め、育種家たちの挑戦は続いていました。1867年、フランスの育種家、2代目ジャン・バプテスト・ギヨーの手によりついに完全な四季咲き大輪のばらが誕生します。

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