【9月号】赤バラに輝く歴史と人類の希望

【9月号】赤ばらに輝く歴史と人類の希望

バラといえば赤、歌になっているのもプロポーズに使用されるのも赤いバラと決まっています。

それほどなじみ深い赤バラですが、現在目にするような大輪の赤バラは容易に誕生したわけではありません。 そして今現在も究極の赤バラをめざして育種家の挑戦は続いています。今回はいつの時も人の心を虜にする赤いバラ魅力にせまってみたいと思います。

赤バラの歴史

HT種 初の赤バラ「リバティ」

四季咲き大輪系統で最初の大輪赤バラと称される品種はイギリスで1900年に誕生した「リバティ」と言われています。それまでの初期ハイブリッドティー種はほとんどがピンクローズでした。

作出者のディクソン氏は1836年から続く世界でも由緒あるバラ育種家の家系で、当時のディクソン氏はこのリバティに対し「このバラは私の誇りであり、イギリスの誇りであり、人類の誇りである」という言葉を残しています。

HT種 初の黒赤バラ「シャトー・ド・クロブージョ」

その後、フランスのペルネ・デュッセにより1908年、初代の黒赤バラといわれる「シャトー・ド・クロブージョ」なども作出されましたが、1914年以降大戦の時代となりバラ育種家たちにとっても受難の日々となります。

HT種 初のビロード調の赤バラ「クリムソン・グローリー」

「赤バラが流行ると戦争が起こる」などというジンクスも生まれたほどで、その象徴のように、1935年、ドイツで歴史的なバラが誕生しました。

ディクソン家同様、由緒ある育種家の二代目、ウィルヘルム・コルデス氏による「クリムソン・グローリー」です。

この品種は初めて花弁にビロード調の質感を体現した赤バラといわれています。リバティの5代目の子孫に当たるカトリーヌ・コルデスを親に交配が繰り返され、最初の交配から4世代後に誕生した品種です。深い色彩に加えて甘く豊かな芳香でも知られ、第二次世界大戦中、敵国であったドイツのバラを排除したイギリスでもこの品種だけは栽培され続けたほど、当時は人気の高い品種でした。

現在のバラと比べますと樹勢が弱い、花色が退色(ブルーイング)するなどの弱点が指摘されますが、この品種がイナ・ハークネスなど多くの優れた子孫を残していることは、語る必要もないほどによく知られています。しかもその影響はハイブリッドティー種のみならずフロリバンダローズやつるバラなど、他系統にまで広く及んでいます。

また、作出者のコルデス氏の仕事もハイブリッドティー種のみならず、現在のフロリバンダローズのスタイルを築いたとされる「ピノキオ」(ローゼンメルヘン)の作出や「コルデシー系」といわれる耐寒性と返り咲き性をねらったつるバラ系統の確立、その他原種系交雑種の研究など大変広範囲におよび、20世紀最大の育種家と讃える人が少なくありません。

クリムソン・グローリー以降 HT赤バラの全盛期

クリムソン・グローリーの登場により赤バラの交配はますます盛んになり、大戦での被害が少なかったアメリカでは特に大きな発展をみせました。特に1940年に作出された「シャーロット・アームストロング」は「ガーデン・パーティー」など戦後のアメリカ生まれの名花たちの礎ともなった歴史的な品種で、「クリムソン・グローリー」に淡黄色の「スール・テレーズ」が交配されて誕生しました。

この「シャーロット・アームストロング」を親に「ミランディ」、さらにこの2品種の交配により「クライスラー・インペリアル」など、アメリカを代表する名花が誕生します。この「クライスラー・インペリアル」と黒赤の代表的名花「シャルル・マルラン」との交配により「パパ・メイアン」「ミスター・リンカーン」など、現在もよく知られる黒赤バラの名花が誕生しています。いずれも芳香高い香りの名花としても知られています。

現在の赤バラはさらに樹勢も弁質も良くなり、「イングリッド・バーグマン」など輝くようなビロード赤の花弁をもつ品種が現れ一般的な赤バラのイメージはとこのような品種ではないかと思われるのですが、強い芳香は黒みをおびたバラにしか見受けられません。

輝くような赤でなおかつ情熱的な強い芳香を有する品種があれば、また新たな赤バラの歴史を刻んだといえるのでしょうか。個人的にはそんなバラを作出することができれば、それだけで一生満足できそうに思えてしまいます。

数あるバラの中でもとくに多くの人々を魅了してきた赤バラの歴史的名花たち。弁質や樹勢でははかれない歴史と偉業が、今も静かに光を添え、あせることのない輝きを放っています。

特におすすめの品種

特におすすめの品種を抜粋して、ご紹介させていただきます。

クリムソン グローリー – Crimson Glory

多くの赤バラ名花誕生への礎となった歴史的な価値で今も語り継がれる品種です。花首が弱いことなどが弱点とされましたが、なよやかな感じが現在ではかえって魅力的に思えます。樹は大きくなりにくいですが花付きは良く、花壇用に優れています。ダマスクを基調とした甘い香りがあります。

ミランディ – Mirandy

子孫のクライスラー・インペリアルの方が知名度は高いですが、古花ながら樹勢強く花付きも大変良好、フルーティーな強い芳香も魅力です。独特のワインカラーを含むローズレッド他に類を見ないもので発色がやや難しいものの、美しく咲いた時には息をのむ美しさです。

シャルル マルラン – Charles Mallerin

戦前に知られた黒赤バラ「コンゴ」の子孫で大変見応えのある黒赤バラです。情熱的で素晴らしい芳香があり、現在も愛好家の多い品種です。枝が偏って伸びやすく、花付きも少ないとされますが、樹をつくりこめば思いのほか多くの花が楽しめます。

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