オールドローズ(ばらの系統)

オールドローズ(ばらの系統)

「オールドローズ」とは、名前の通り古くからある歴史的な品種群を指します

1867年に作出された初のハイブリッド ティー種である「ラ フランス」以前のばらを総称して指しますが、学術的に明確な定義があるわけではありません。便宜上の分類と言えます。当園では、ガリカローズを始めとする古代から栽培されていた品種、および18世紀から20世紀初頭にかけて確立されたつる性の品種群をおおまかにオールドローズとして区分しています。

品種の成り立ちの違いからいくつかの系統があり、それぞれ特徴が異なりますが、一般に「つる性」であることがおおむね共通しています。また、「ダマスク香」に代表されるすばらしい芳香を持つ品種が多いことも特徴です。古い系統ほど一季咲きのものが多くなり、枝はしなやかで誘引しやすく園芸素材として最も優れた性質を持っています。「キャトルセゾン」を交配に使うことで返り咲きする品種も徐々に発表されていきます。人類とばらは、互いに深く関わってきたことがうかがい知れる、貴重な品種たちです。

オールドクラシック(前期オールドローズ)

西洋で古くから栽培されていた「ガリカ」「アルバ」「ダマスク」「ケンティフォリア」(+派生系統の「モス」)を、オールドローズの基本4種と呼ばれることがあります。「庚申ばら(ロサ キネンシス)」の交配が本格的に始まる前の系統たちで、「キャトルセゾン」など一部の例外を除いて、ほとんどは一季咲きのつる性品種です。

オールドローズらしいロゼット咲きの美しい花形、ダマスク香に代表される素晴らしい芳香など、古代から愛されてきたつる性ばらたちを現代に伝える貴重な品種たちです。園芸種としても優れた性質を持っており、特に花付きのよさ、香りの高さ、枝ぶりが整いやすくほどよく伸びるなど、日本のお庭にも大変使いやすい優秀な品種が多く、今一度見直してみたい品種たちです。

ガリカ

オールドローズの中で最も古い系統。「燃えるように赤いばら」との記録が残る赤ばらの祖としても重要な系統です。ソフトピンクや絞り咲きの品種も見られます。すべて一季咲き、枝がしなやかで花付きや香りがよいため、庭園素材として最も優れている系統のひとつです。

ガリカ(トスカニースパーブ)
品種名:トスカニー・スパーブ

アルバ

ガリカ・ローズと対をなす存在、こちらは白ばらの祖として重要な系統です。欧州や西アジアに分布する原種ばらの自然交雑により生じたとされています。美しい青みを帯びた葉や透明感のある花色、そして清涼感あるふれる芳香が特徴。清楚感を出したいときに活躍します。

ガリカ(アルバセミプレナ)
品種名:アルバ・セミプレナ

ダマスク

「ダマスク香」の名前で有名な系統です。ダマスクの名はシリアの首都ダマスカスにちなむとされています。その香りが評価されブルガリアや南フランスなどでは香料としても利用されています。中国の庚申ばらとの交配により新系統を誕生させています。

ダマスク(ロサダマスケナトリギンティペタラ)
品種名:ロサ・ダマスケナ・トリギンティペタラ

ケンティフォリア

系統名は「100枚の花びら」という意味があります。肖像画でマリー アントワネットが手にしているばらもこの品種といわれています。オールドローズらしいエレガントな花容と芳香に恵まれています。重ね多い花でカップ咲きの品種も多く、エレガントな系統です。

ケンティフォリア(ロサケンティフォリア)
品種名:ロサ・ケンティフォリア

モス

ロサ・ケンティフォリアから突然変異により生じた系統です。蕾や花に分泌液を出す繊毛があり、枝にも多くのトゲで覆われている姿には圧倒されます。いかにもオールドローズらしい優雅な雰囲気にあふれた品種群です。一部にダマスクローズ起源の品種も存在します。

モス(アンリマルタン)
品種名:アンリ・マルタン

オールドモダン(後期オールドローズ)

以下の系統から本格的に「庚申ばら」との交配が始まりました。徐々に返り咲き性を獲得していき、春以外の開花も楽しめるようになっていきます。葉も照りを持ち始めるなど、枝葉に庚申ばらの影響が見て取れ、よりモダンローズに近くなっていきます。花形や香りなどがより多彩となり、現在も家庭用つるばらとして愛培されています。

ブールソール

品種数が少なく系統として認めない考え方もありますが、庚申ばらの影響を色濃く残し、比較的初期の交配種として興味深いと思います。赤みを帯びた枝や葉の繊細さが美しく、多くは早咲きで枝にはトゲも少ないか全くないので誘引も容易です。

ブールソール(ブラッシュブールソール)
品種名:ブラッシュ・ブールソール

ポートランド

諸説ありますが、西洋のばらと庚申ばらとの交配で誕生した系統とされています。病害虫には特に注意が必要な、お姫様のような系統ですが、それぞれに大変魅力的で根強い愛好家を持つ系統でもあります。ブルボンローズより返り咲く品種が多く見受けられます。

ポートランド(シドニー)
品種名:シドニー

ブルボン

つる性としての性質が強いため返り咲きは少なめですが、カップ状であったりロゼット状であったりと優雅で魅力的な花容を持つ品種が多い。家庭用つるばらとしての実用性にも大いに注目されます。一部四季咲き品種もあることから、その起源にも興味が湧きます。

ブルボン(レーヌヴィクトリア)
品種名:レーヌ・ヴィクトリア

ハイブリッド ムスク

20世紀に入ってから確立された系統です。成り立ちがはっきりしませんが、多くは安定した返り咲き性を有し、秋まで咲き続ける品種もあります。家庭用のつるばらとしても現代でも高い人気を誇ります。耐寒性にも優れているので寒冷地向けつるばらとしておすすめ。

ハイブリッドムスク(ペネロープ)
品種名:ペネロープ

ノアゼット

例外もありますが多くの品種が返り咲き性に優れ、優雅な色彩と繊細な花容を持ち、家庭用のつるばらとしてハイブリッドムスクローズ同様に人気の高い系統です。アーチなどに適正を持つ品種が多く、また黄色の色彩を持った品種がこの系統から多く見られるようになります。

ノアゼット(ブラッシュノアゼット)
品種名:ブラッシュ・ノアゼット

ハイブリッド パーペチュアル

オールドローズとしては最後の系統となります。大輪で強健な四季咲きばらを生み出すべく誕生しましたが、まだつる性です。パーペチュアル(四季咲き)というほどの返り咲きは得られなかったものの、魅力的な花容や芳香に、当時の人々の注目も集まりました。

ハイブリッドパーペチュアル(スヴニールデュドクトゥールジャマン)
品種名:スヴニール・デュ・ドクトゥール ジャマン