カメラコラム

基本的な写真の構図を考えてみよう

基本的な写真の構図を考えてみよう

写真とは、目の前にある風景の「一部」を映像として残したものです。

この「一部」という部分が大切で、全部ではないからこそ「どういった切り取り方」をするかを考える必要がでてきます。複数人のカメラマンが、同じ場所、同じ時間に撮影していたとしても全く異なる写真が撮れるのは、この風景の切り取り方、着眼点が人それぞれ異なっているからです。ここが写真の奥深いところです。

このように、写真とはそれぞれの感性によるところが大きいのは確かですが、写真が上手く見える定石のような基本構図は存在します。まずは一旦これを真似てみてみましょう。これだけでも写真の印象は随分と変わってきます。

まずは「主題」と「副題」を明確に!

構図を考える前に大切なことがあります。

限られた範囲に絞って風景を記録する写真という性質上、何でもかんでも写そうとすると、折角写真として伝えたい大事な要素以外にも目移りしていまい「ごちゃごちゃ」した印象を受けてしまいます。

料理の写真を撮りたいのであれば、最も伝えたいのはその料理であり、それ以外の人の手や余計な食器類、お手拭きなどは不要でなるべく写真に入らないように撮影した方が俄然見栄えがよくなります。

この「写真の中で最も伝えたい要素」を「主題」と呼びます。上手な写真とは、主題がはっきりとしており一目でその写真が何を伝えているのかが分かる写真です。まずは自身が何を撮影したいのかに意識を向け、それ以外の要素はなるべく写らないよう撮影してみましょう。

情報は足し算ではなく「引き算」で考えていった方がよい写真に見えやすくなります。

主題が決まったら、それらを補足するような要素である「副題」にも目を向けてみましょう。もしばらの写真を撮影するときには、大体において主題はばらになりますが、副題は様々考えられます。葉や枝まで少し写してみて生きた植物であることを演出してみたり、奥行き感のある写真にするために遠景を入れてみたり、晴れた青空をいれて生き生きとした写真にしてみたりと、副題を考えらるようになるとさらに写真に深みがでていきます。

品種名「ホワイトクリスマス」。ふんわりとした純白の花が魅力ですが、実は「丸い蕾」も本品種の魅力のひとつ。主題はばらですが、副題は蕾になるように撮影してみました。

日の丸構図

主題となる要素を写真中心に置く構図。品種名「マイチョイス」。
大きな花の存在感を演出するのには最適。品種名「アリゾナ」。

主題となる被写体を真ん中に配置した構図です。

主題となる要素を真ん中に持っていくだけで「最も見せたいもの」が明確にわかる構図です。主題を寄せて大きく見せたり、背景は大きくぼかしたりして情報を少なくすることでより効果的な演出ができます。

ただ、シンプルで簡単な構図ゆえに新鮮味や奇抜性などはあまりなく、飽きやすい構図とよく言われます。この構図がダメというわけではありませんが、写真を始めて日が浅いうちはどうしてもこの構図ばかりになりがちなので、意識的に別の構図も試してみるとよいでしょう。

ばらにおいては、特に大輪花で目立つ存在となるハイブリッドティーローズで効果的に演出できる構図です。

ちなみに、作品性より写実性が求められる当園ウェブ上の商品画像は、花の特徴が客観的に分かるようにしなくてはいけないので、基本的に日の丸構図になっています。

対角線構図

主題となる要素を対角線上に置く構図。品種名「ブライダルピンク」。
厳密に対角線でなくとも大まかに斜めに配置するだけでも効果あり。品種名「イスパハン」。

主題となる被写体を対角線上に配置した構図です。

複数の被写体を斜めに見える位置に配置することで「立体感」や「躍動感」を演出することができます。たとえば、斜め方向から撮影するときに各要素に距離を付けてボケさせることでこれらを容易に演出できます。

また、写真としての安定感にも優れており、各種要素をバランスよく配置しやすいメリットもあります。厳密に対角線上に並ばなくとも、全体の雰囲気として斜め方向に要素が並んでいれば対角線構図として成り立ちます。

他の構図との複合技もしやすいなど大変応用力に優れた構図ですので、ぜひこの構図は覚えておきましょう。

三分割構図

縦横をそれぞれ三分割し、それぞれの交点部分に主題を配置する構図。品種名「ラフランス」。
対角線構図との相性もよく、合わせ技でより安定した写真にできます。品種名「ダスキーメイデン」。

縦横それぞれ三分割し、それぞれの交点に主題を配置する構図です。

多くの場面でバランスのとれた写真が撮れやすくなる基本構図のひとつです。交点は4つありますので、この中に写真の主題となる要素を配置してみてください。たったこれだけでも主題にすっと目が行く安定した写真になります。

また、上記「対角線構図」と併用しやすく、この2つを合わせた構図だとさらに印象的な写真となりやすいのでおすすめです。

境界線がはっきりした風景にも有効

三分割構図は、ある要素を交点に配置するだけでなく、全体の構造を1:2の比率で分割するのにも役立ちます。

例えば、山と青空という風景を撮影したいとき、山と空の境界線ははっきりしているがわかるかと思います。このような風景の場合、この境界部分を真ん中に持ってきてしまうと、「雄大な山を見せたいのか」「広大な青空を見たいのか」分からない、どっちつかずの写真になってしまいます。

当園から見る甲斐駒ヶ岳。境界線を真ん中に持ってきてしまうとどっちつかずの写真になりがち。

この場合は、山と空を半分ずつではなく「1:2」の比率になるよう構図を調整してみてください。主題となる方の面積を大きくすることで、写真に明確な意味を持たせられ、より印象的な写真にすることができます。

三分割構図では縦横を三分割するので、この線を基準にして考えることができます。また、副題などを交点に配置すればさらに安定した写真になります。

山の方を1に、残りの青空を2にして撮影。広大な青空にそびえる高い山、という写真になりました。山は三分割構図の交点に入るよう意識しています。
霧ヶ峰から見た八ヶ岳。こちらは逆に空を1、八ヶ岳を2の割合で分割し、雄大な八ヶ岳とその裾野を表現しています。

構図の中には余計なものを入れすぎない

私が普段ばらの写真を撮影しているとき特に意識している構図は上記3つで、これだけでも写真は見違えるほど安定して印象的なものになります。

ほかにも定番の構図はあるのですが、まずは様々な場面で利用できる応用が利きやすい基本の構図を意識してみてください。そして何より、自分が最も伝えたいことを明確にし、それ以外の要素はなるべく入らないようにする「引き算」の考え方を身につけられると、もっと写真は上達するかと思います。

作例&その他の構図

日の丸構図。品種名「ケルナーカーネバル」。
対角線&三分割構図。品種名「レーゲンスベルグ」。
トンネル構図。周囲を別の要素で囲い、奥の様子に視線を誘導する構図。霧ヶ峰「八島ヶ原湿原」。
三角構図。写真の中に三角形の線が見えるような構図。写真の安定性が高く、奥行き感も演出しやすい。北八ヶ岳の双子山から双子池までの山道で撮影。
シンメトリー構図。左右、または上下対称の被写体を真ん中で区切るような形で撮影する構図。北八ヶ岳「雄池」。

関連記事一覧