典型的なつる性ばらのおすすめ品種

典型的なつる性ばらのおすすめ品種

ばらには枝をつる状に伸ばす性質を持った品種が存在します。広い場所をばらが覆う姿は圧巻の風景です。
今回は、皆さんがつるばらと聞いてイメージする典型的なつる性ばらについて、おすすめ品種をご紹介したいと思います。

典型的なつる性ばら 「ランブラー」「クライミング」「シュラブ」

典型的なつる性ばらとして分類されているのが「クライミング」「ランブラー」「シュラブ」の3系統です。

「クライミング ローズ」は、いわゆるもっともつるばららしい系統と言えるでしょうか。品種の数も多く、様々な交配がされているのでその性質も様々です。はじめからつる性ばらとして作出された品種と、ハイブリッドティー種やフロリバンダ種などの四季咲きばらが突然変異によりつる性となった品種に大別されます。

「ランブラー ローズ」は、つる性ばらの仲間のうち、日本の野ばら(ロサ・ムルティフローラ) や テリハノイバラ(ロサ・ルキアエ)、ロサ・モスカータ や ロサ・セティゲラ などの ” 原種を交配親とする品種群 ” をまとめた系統です。多くは交配親である原種からの影響で小輪房咲き、一部の例外はありますが春のみの開花で非常に伸長力が強く、花付きが大変良いのが特徴です。

「シュラブ ローズ」は、オールドローズも含めすべてのつる性の系統の中で、どの系統にも属せないばらたちをまとめて扱っている系統になります。様々な品種が雑多に集まっているのでその性質は多種多様です。当園では扱いがありませんが、「イングリッシュローズ」もこの系統です。

つるばらの性質や系統について

つる状に伸びるばらの特徴や系統についての詳細なコラムは下記ページにて執筆しました。
さらに詳細なつるばらの性質や系統の特徴についてはこちらをどうぞ。

枝の性質に注目して選んでみよう

以上の3系統は、様々な交配がされているので品種によって枝の伸び方に大きく差があります。

・ランブラー ローズは伸長力が強く、品種によっては6m以上をゆうに超えるほど枝を伸ばすものもあります。
・クライミング ローズも伸長力は強い方で、また枝が曲がりにくい品種も多数あります。
・シュラブ ローズは雑多に色々な品種が入っているので枝の伸び方も咲き方も千差万別です。

そのため、オールドローズ以上に品種の枝の伸び方に注目し、適した場所へ植栽する必要があります。

ただ、オールドローズと比べると色彩や花型も豊かで、伸長力が強い品種も多く、広い場所であればそのすべてを覆えるほど伸びてくれますので、適切な場所へ植栽できればその効果は絶大なものとなります。

適切な植栽場所を決める要素は主に4つ

植栽場所を決める主な要素は、以下の4つにまとめられます。

  • その品種の伸長力
  • 枝の太さや固さ・伸び方
  • 花付きの良さ
  • ステム(花茎)の長さ

これら要素を考えながら、性質別の適切な植栽場所を決めていきます。

花付きがよく、枝がしなやかな品種は多くの植栽場所に最適

つる性ばらの中で、最も扱いやすいとされる品種とは「花付きがよく」「枝が柔らかい」という性質を持った品種です。

特に小中輪系の品種は房咲きになることが多く、圧倒的な開花数を得ることができます。小さい花はそれだけ1つの花に使う養分の量が少ないということになるので、非常に多くの花を付けることが可能になります。

伸びてきた枝いっぱいに開花する姿はつる性ばらの特権です。つる性ばらにおいて、花付きがよい品種というのはそれだけ風景が作りやすいということでもあります。

ステムがほどよい長さであることも重要

ステムが短い、長すぎない品種は枝に近いところで開花します。枝から大きく離れて開花することがないため、構造物との一体感を演出することができます。通行の妨げになることも少なくなるでしょう。

ステムが短いという性質は非常に重要な性質で、開花して欲しい場所へ枝をもってくれば思い通りの場所で開花してくれます。特に家庭用のフェンスやアーチなどはステムが短い品種でないと、全体的にもさっとしてしまい折角の構造物を活かしきれなくなる場合があります。

枝のしなやかな品種は一季咲き

また、枝がしなやかであればあるほど低い場所でも枝を倒して誘引することができ、思った場所へ枝先を持っていきやすくなります。つる性ばらは枝先に多く開花するので、その枝先を自由に動かすことができるしなやかな枝は、応用がききやすく植栽効果が最も現れやすい性質だと言えるでしょう。冬に行う誘引は、さながらキャンパスに絵を描くように、花を咲かせたい場所へ枝先をもっていく作業です。

枝がしなやかな品種の条件は「一季咲き品種」「返り咲きが少ない品種」であることです。

返り咲きが多い品種は、開花する度に枝の伸長を一度止めるため、枝に固さが加わっていきます。枝に節が多くなり、木立ばらに近づいていきます。枝が剛直な品種は、それだけ広いスペースを必要とし、開花位置の調整も少し難しくなっていきます。何度も開花するという性質は一般的に歓迎されますが、ことつる性ばらにおいては品種選びを慎重に行う必要があります。

特に大輪系の返り咲き品種は枝が固くステムが長い傾向にあります。返り咲きがある品種を選ぶ場合、小中輪系の品種が枝ぶり的にも扱いやすい品種が多いので、最初はこのような品種から選んでみるとよいでしょう。

一季咲き品種や、返り咲きが夏ころまでの品種は、春に一度開花すれば後は枝が伸びていくだけです。節ができることもなくすらりと伸びていく枝は、とてもしなやかで柔軟です。枝先が風に揺れる姿は剪定では表現できない趣です。冬の誘引作業もやりやすくなるため、当園では「つるばらは初めて」という方にこそ一季咲き品種をおすすめしております。

ただ、一季咲き品種は枝が伸びやすい傾向にあるので、よく伸びるのに小スペースの場所へ植栽するという状態だけは避けましょう。植栽場所の広さと、品種がもつ伸長力の両方にマッチするような品種を選びます。小スペース向きのつる性ばらは「オールドローズ」に多いので、場所が限られている場合はオールドローズがおすすめです。

特に推奨できる品種を以下に挙げてみます。まずはこの中から選べば失敗も少なくなるかと思います。
いずれも花付き、枝の扱いやすいさなどが優れており、植栽効果も抜群に高い名品種たちです。

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大輪系でステムが長く、枝が固い品種は壁面向け

逆に扱いにコツがいる品種は「大輪系の品種」で「ステムが長く」「枝が固い」品種です。

枝が固くステムが長い品種は壁面へ

枝が固いと横に曲げることが難しくなるため、必然的に高さがある構造物に誘引しなくてはいけません。1.2m以下のフェンスへ誘引、というのはやはり難しくなってくるでしょう。ですが、大輪系の花弁数が多いゴージャスな品種は枝を横に倒し頂芽優勢を崩さないと開花数を増やせないので、誘引という作業は必要になります。そのため、高さのある構造物の上部で枝を横に倒して誘引することになります。ポール仕立てのように、螺旋状に枝を巻いても頂芽優勢は崩せないのでご注意ください。

花が大きく返り咲きが多い品種は特に枝が固くなる傾向にあります。一般的につる性品種の返り咲き性は好まれますが、大きなデメリットも存在しますので、植栽する場所や品種選択はより慎重になる必要があります。

もう1つ、ステムが長い品種は、誘引させた主幹となっている枝から離れた位置で花を付けることになります。つまり、想像していた位置と異なる場所で花を付けてしまうことが多くなってしまうため、構造物との一体感が薄れてしまう欠点があります。特に通路上のフェンスやアーチでは人の通行を邪魔してしまうことにもなってしまいます。切り花として花瓶などに飾るという点では有利ですが、風景としては少々違和感があります。

こういった性質のある品種は適切な植栽場所が限られてきます。高さが確保でき、かつ花が枝から離れても違和感なく十分に鑑賞できるような広い場所。最も適した場所は「壁面」であると考えます。一面が壁の構造物である外壁面は、どのような品種であっても調和を崩すことはありません。大きく安定した不動の構造物である壁面であれば、枝が固くステムの長い品種であっても違和感なく美しい演出が可能になります。あるいは、ステムが長い品種は花が俯き加減に咲くので、「大きなパーゴラ」など花を見上げるような形で使う場合も有効です。

広さと高さの両方がある垂直面が「壁面」です。つる性ばらを扱う場所として最も適切な場所で、品種の持っている能力を最大限引き出せる場所です。つる性ばらを植栽される場合は積極的に利用したいところです。壁面とアーチ、フェンスなどを組み合わせることで奥行きのあるお庭も演出できます。

ステムの長さと枝の固さが一番の注目ポイントです。大輪系の品種は花と花の間に間隔がありますので、さらに葉の茂りがよい品種を選びたいとろこです。

植栽場所に対して制約が大きいこれら品種ですが、オールドローズやランブラーローズにはない色彩の品種や、独特の強い香りをもった品種も多いため、上手に使いこなしてみましょう。壁面や大きなパーゴラなどであればメインを飾ることも十分可能です。

これら品種の中で、特に人気が高い品種を以下に挙げてみます。
広い場所、特に高さが要求されますが、色彩豊かで現在でも人気のある品種たちです。

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枝の固さやステムの長さが鍵

以上、2つの項目に分けておすすめ品種をご紹介させていただきました。

ランブラーローズであれば、基本は小輪房咲きでよく伸び、春のみの開花なので枝もしなやかでやわらかいため、広いスペースのある場所を一気に彩りたい場合にとても便利にお使いいただけます。これに準じたクライミングローズも同様で、特に「つる サマー スノー」や「つる アイスバーグ」はつるばらの中でも非常に植栽効果が高い品種になっており、現在でも大人気です。

逆に、ステムが長く枝が固くなってしまう品種は、基本的に壁面がベストの植栽場所となり、それ以外は難しくなってきます。壁面を大きな大輪花でメインとして扱い、その間を小輪房咲き品種で埋めてあげるとバランスが取れて美しい風景になります。少し扱いにくいといえばそうなのですが、使いこなせれば他の系統では再現できない面白いお庭が作り出せます。

因みに、オールドローズは基本ステムは短めで枝も柔らかい品種が多く、伸長力もランブラーほどないものが多いので、小スペースでの植栽がご希望の場合はオールドローズが大変おすすめです。

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