センサーサイズと焦点距離(画角)の関係
「レンズの焦点距離と画角」の記事にて、レンズの焦点距離が変化すると撮影できる範囲「画角」が変化することを解説いたしました。
焦点距離が短いと広く、長いと遠くを撮影できるようになります。
ただ、この焦点距離と画角の関係は、センサーサイズにも左右されるという面倒な事情あります。例えば同じ「50mm」の焦点距離でも、それぞれセンサーサイズが異なるカメラだと同じ画角では写らないのです。
なぜこのようなことが起きてしまうのか、どう解決していけばよいのかを書いてみたいと思います。
センサーサイズが小さくなるとより遠くを写す
上記画像は、センサーサイズの違いによって撮影できる範囲を簡略化して表した図です。この図は焦点距離が固定で、センサーサイズのみ変化させています。
左の青いセンサーサイズのものが写る範囲を青く、それより小さいセンサーサイズである緑の写る範囲を緑に塗っています。青いセンサーだと樹全体が写っている状態なのに対し、緑のセンサーだと同じ焦点距離でも樹全体は写っていないことがわかります。
このように、センサーサイズが小さくなると同じ焦点距離でも画角が狭くなります。つまり、センサーサイズが小さいカメラは、大きいセンサーを搭載したカメラよりも「遠くを写しやすい」という状態になっています。
※ただし、「パース構造」や「被写体と背景の距離(大きさ)」には変化が無いことに留意する必要があります。センサーサイズや焦点距離による画角の変化は、目の前にある景色の切り取る範囲を決めているだけで、パース構造や背景のものに対して大きさの比率が変わったりなどの変化はありません。これらを変えるには撮影者自身が引いたり寄ったりする必要があります。
フルサイズカメラで撮影すると上記画像すべてが写りますが、APS-Cカメラで撮影すると同じ焦点距離だったとしても赤枠の部分が撮影されます。画角が狭くなり、よりアップされた状態で撮影されます。
センサーサイズが小さくなった分だけ、写真として切り取られる部分が小さくなると考えていただいても意味は同じですので、こちらで覚えておいても大丈夫です。
一例として、以下の2枚の画像はいずれも焦点距離「50mm」のレンジで、” 同じ撮影場所(立ち位置) ”から撮影しています。そして上が「フルサイズ機」、下が「APS-C (キヤノン) 機」で撮影したものです。
このように、同じ焦点距離と撮影距離であっても画角(撮影範囲)が大きく異なることが分かります。
写真を撮るときやレンズを選ぶとき、これを念頭に置かないと同じ50mmの話をしているようで実は違う画角を指しているという認識のズレが発生してしまいます。
この認識のズレを防ぐため、カメラの分野では「フルサイズ換算(35mm判換算)」という指標があります。
基準となる画角「フルサイズ換算」
「フルサイズ」「APS-C」「マイクロフォーサーズ」など、様々な大きさのイメージセンサーを搭載するカメラにおいて、センサーサイズの違いによる画角の変化があると認識のズレが発生してしまうため、あるセンサーサイズの画角を基準に考えるようになりました。
この基準が「フルサイズ センサー」です。フィルムのサイズが35mm判(現在のフルサイズ)だったので、歴史的背景からフルサイズを基準にしています。このフルサイズ機で見たときの画角を基準に焦点距離を計算し直す方法が取れられています。
この計算方法を「フルサイズ換算」、または「35mm判換算」と呼びます。
厳密に計算する場合は、そのカメラの正確なセンサーサイズを調べる必要があるのですが、そこまでしなくとも大まかな計算方法が確立されていますので、まずはこれを覚えておきましょう。
フルサイズ機をお持ちの場合はそのまま
フルサイズセンサーを搭載したカメラをお持ちの場合は、レンズの焦点距離をそのまま解釈していただければ大丈夫です。このセンサーサイズが基準になります。
APS-C をフルサイズ換算するには「1.5倍」
ニコンやソニーなどのAPS-C機をお使いの場合は、レンズに書かれている焦点距離に対して「1.5倍」するとフルサイズと概ね同じ焦点距離になります。
例えば、APS-C機で標準域である「50mm」の画角を得たい場合は、大体「33mm」の焦点距離で撮影すればフルサイズ機で撮影したのと大体同じ画角になります。逆にAPS-C機のレンズで「50mm」に合わせると、1.5倍の「75mm」の画角となり少し望遠気味に写ります。
このように、換算前と換算後で数値が異なるので「50mm(フルサイズ換算75mm)」といった感じで併記することが多いです。
APS-C(キヤノン) をフルサイズ換算するには「1.6倍」
APS-Cセンサーは厳密な大きさが規定されていないため、機種によって少しずつ大きさが異なっています。
特にキヤノン製APS-C機は、他のカメラメーカーのAPS-Cよりセンサーサイズが一回り小さいことが知られています。
このため、キヤノン製のAPS-C機をお使いの場合のみ、フルサイズ換算するためには「1.6倍」と少し拡大する必要があります。
上記画像は「フルサイズ機で85mm」と「APS-C(キヤノン)機で53mm」で撮影した画像です。キヤノンAPS-C機で53mmはフルサイズ換算で約85mmになるので、被写体である花の大きさや背景の範囲など概ね同様に写っていることが分かりますね。
マイクロフォーサーズ をフルサイズ換算するには「2倍」
マイクロフォーサーズ機は単純に焦点距離を「2倍」にすることでフルサイズ換算ができます。
こちらはマイクロフォーサーズ機(OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II)で、レンズ「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」を使って撮影した画像です。レンズの名前の通り焦点距離「25mm」の単焦点レンズですが、フルサイズ換算すると丁度「50mm」と標準域になるので、マイクロフォーサーズ機をお使いの場合は「25mm」が標準域になります。
レンズ選びは「フルサイズ換算」で考えよう
上記のことをまとめますと
- フルサイズ → 換算必要なし
- APS-C → 1.5倍
- APS-C(キヤノン) → 1.6倍
- マイクロフォーサーズ → 2倍
このように計算すればフルサイズ換算(35mm判換算)可能です。
フルサイズを基準にすることで、どのセンサーサイズのカメラであっても公平に比較検討することが可能になります。特にどれだけの範囲が写るのかという画角のイメージが付きやすくなるので、この換算表はぜひ覚えておくことをおすすめいたします。