ばらの樹形図

ばらの樹形図

つるばらを 12 種の樹形図で姫野ばら園独自に分類しました。お庭での品種選びにお役立てください。※四季咲きばらは含まれません。

概要

樹形図の概念は庭造りに於いて必要不可欠であります。

花の嗜好は画像である程度判断できます。樹形図は枝の伸び方の特徴を判断する目安として活用して下さい。学術的見地での分類ではなく、庭造りの良き友としての、あくまでも簡易的なグループ分けです。

樹形図は四季咲性を持たぬ品種群に対し、樹形に基づいた分類をして、庭への用途、品種の使いようなどの指針とならぬかと考えた方法論であります。幾つかに区分し、分かり易く使いやすい状態を目指しております。

しかしながらこの樹形図の構想は緒に付いたばかりであり、とりあえずの状態、いまだ無形の流動の内に有る状態であります。完成までの道のりは遠く厳しく、幾度と無く構成の変更や、データーの変更を繰り返さざるを得ぬ状況です。

より分かり易い状態を目指し、粉骨砕身の努力を試みる所存ではあります。皆様には、この辺の事情、ご理解を頂ければ幸いでございます。

12 に区分した場合を想定した樹形図を考えました。基準としたのは、ベイサルシュートの伸びる長さ、方向、強度、湾曲を始める高さと度合い、小枝の発生度合い等で、これの性質がつるばらの使いこなしに於いて、最も重要なポイントとなります。

基本の樹形となる 2番 ~ 8番 に関しての詳細

ばらの基本樹形となる「2番」~「8番」に関しましては、別途詳細な特徴や事例を記した記事を別途執筆しています。

よろしければこちらも合わせてご覧ください。

樹形図再考 – 2番~8番 の特徴と具体例 –

1a ~ 1d. 四季咲き木立の樹形タイプ

1a ~ 1d. 四季咲き木立の樹形タイプ

四季咲き木立ばらの樹形を「直立(1a)」「半直立(1b)」「半横張り(1c)」「横張り(1d)」の4つに分類しています。

四季咲き木立ばらは安定して何度も開花するため、枝は固く早期に自立します。枝が伸びやすい方向は品種によって異なり、「クイーン・エリザベス」などは比較的上方へ枝が伸びやすく、逆に「ソフィーズ・パーペチュアル」などは横に広く枝が広がっていきます。枝が高くなりやすい品種は花壇の後方へ、低く横に広がる品種は手前に植栽することで効果がでてきます。

1. 繰り返し咲シュラブローズ型樹形 – 自立株立ち状

繰り返し咲シュラブローズ型樹形 - 自立株立ち状

繰り返し咲大輪種等に多く見られる樹形です。四季咲大輪種の樹形を大型にした感があります。

株元から数本の主幹を出し、枝は概して太枝性で、主幹は上向きに伸び、不規則に開花があります。ベイサルシュートは太く、多くの場合、長く伸張し、先端に数輪の開花を見ます。

この時点で、ベイサルシュートの成長は一段落となります。その他の枝でも繰り返し咲く分、枝の伸長度合いに限度があり、冬剪定と花ガラ切りを行うことで、樹形はコンパクトにガッチリとした姿になります。

大輪から中輪咲が主流で、美しい花容が持ち味です。風景を醸し出す存在というよりは、一輪の美しさを愛でる対象と考えましょう。イングリッシュローズの一部もこの樹形に該当します。

2. 株立ち型樹形 – 自立株立ち散開状

株立ち型樹形 - 自立株立ち散開状

株元から上方、斜め上方に向けベイサルシュートを伸ばします。ベイサルシュートは開花あるいは枝先の湾曲により、成長の限界を迎えます。

湾曲した部位の手前からは、小枝が発生し、この重さにより、外への傾斜が深くなります。太枝性の場合が多く、枝はある程度の強度を持ち、株元から放射状に枝を伸ばし散開した姿となります。

枝先のしなやかさや、枝垂れ下がる枝の姿は持たず、全体的な姿は太い枝による構成です。一部に繰り返し咲きの品種も存在しますが、一季咲品種が主流の樹形です。

3. クライミングローズ樹形 – 自立

クライミングローズ樹形 - 自立

株元から数本の太く強度のある主幹を伸ばし、この枝は自立します。ベイサルシュートは概して太く剛直に上向きに伸び、先端部の湾曲や太さを失うことにより、成長は一応の限界となります。

株元からの主幹は数本で、多くの場合、3 ~ 5 本止まりです。主幹は途中から順次枝分かれし、枝は直線的で上部に多くの小枝を茂らせ、ゴツゴツとした枝の雰囲気を持ちます。

この姿は、四季咲大輪種の樹形を大型化した様な姿です。主に四季咲品種からの枝変わりのツル性種と、四季咲品種から育種改良された品種が考えられます。代表例としてはツルサマースノーやツルアイスバーグ等になります。

4. オールドシュラブ型樹形 – 自立半球形盛上り型

オールドシュラブ型樹形 - 自立半球形盛上り型

株元より放射状に数本の主幹となる枝を伸ばします。ベイサルシュートは勢い良く上向きに伸び、途中から大きく湾曲を始めます。

湾曲時に多くの小枝を出す場合が多く、枝は太目で自立型の樹形です。太く強度を持つ主幹は柱の役割を担い、樹冠を押し上げ支える役割を負っています。

開花は湾曲部から枝先端部におこり、湾曲頂点から株元までの間では、サイドシュートの発生が見られます。枝の先端は下垂し地表に着く場合もあります。

不整形ではあるが半球形の姿に成長します。代表例としては、デュセス ド モンテベロー や ラ ビル ド ブリュッセル等が考えられます。

5. オールドガリガ型樹形 – 半自立横張型

オールドガリガ型樹形 - 半自立横張型

ベイサルシュートは柔軟性に富み、株元から伸びるに従い大きく湾曲して地表に落ち、枝先は這う様に伸張します。

株元上部は枝が重なり合う様に盛り上がり、横へ横へと生長します。概して細枝性の品種が多く、枝数多く柔軟性に富み、株元が盛り上がり枝先は地に付く半ほふく性ともいえます。

日本人の鋭敏で繊細な庭造りの感性にフィットする品種群です。芸術の息吹を感じさせる品種も多く、代表的品種としては、カーディナル ド リシュリューやイプシランテ等です。

6. ほふくする枝を持つ樹形 – 下垂横張り型

ほふくする枝を持つ樹形 - 下垂横張り型

枝は細く柔らかく、地表を這い進み伸張します。ベイサルシュートは斜め上に伸び出しますが、すぐ枝先を下垂させ、地表を這うように枝を伸ばします。

地表に接した部位から、容易に発根する様子が見られ、そこを基点として更に伸張を繰り返す、グランドアイビーの如く、移動する植物の感があります。

枝は長く伸びますが、繊細でしとやかな趣があり、細やかな感性を大切にする日本人にはありがたい品種群といえます。代表例としてはアルベリック バルビエやアデレード ドルレアン等です。

7. 斜め横方向に伸びる樹形

斜め横方向に伸びる樹形

太く柔らかな枝の性質を持ちます。ベイサルシュートは株元から斜め上向きに伸び出し、途中から大きくカーブを描き、地表に接し這う様に長く伸びます。

全体的に大柄で、細やかな表情は見られません。この部類に入る多くの品種が樹勢強健で枝数の多い傾向にあり、住宅などの壁面や納屋の屋根など、ダイナミックな使いように適性を持つように思われます。

小型アーチや構造物に対し使用するには、本来の樹形を考えると、賢明とはいえません。大輪咲きや中輪咲品種が多く、代表的な品種では、シティー オブ ヨーク等です。

8. 斜め上方へ株立ち – 開帳型樹形

斜め上方へ株立ち - 開帳型樹形

太枝性ですが柔軟性を持ちます。上方へ伸び出したベイサルシュートは伸長するに従い大きく湾曲を始め、多くの場合枝先は地表へ向きます。

特に長く伸長する品種は枝先を地表に付け、地面を這うような場合もあります。住宅の外壁面等が適地の品種が多い。

小~中輪咲の品種が多く、代表的な品種としては、トレジャー トローブの様に枝を際限無く伸ばす品種と、ボビー ジェームス等のように寸詰まりで開帳展開型の枝の伸び方をする品種等が考えられます。

9. 株立ち高性の樹形

株立ち高性の樹形

株立ち状に上方へ高くベイサルシュートを伸ばします。これが主幹となり、この主幹の上部湾曲部から多くの小枝が発生し、株の上部 3 ~ 5m で樹環を形成します。

発生した小枝は長くしなやかに下垂し、この枝に多くの場合開花が起こります。主幹は、花の咲く小枝を上空へ押し上げ支える柱の役割を果たす様に思われます。

主幹を倒し、誘引する事も考えられますが、本来の樹形を活かして使う事に特徴的な美しさと活用方法が潜む様に思えます。代表的な品種はランブリングレクター、キューランブラー等です。

10. 9. の樹形を小型にした姿

9. の樹形を小型にした姿

株立ち状に上方へベイサルシュートを伸ばします。枝は太く強いが、途中から枝を湾曲させます。

湾曲部周辺からは多くの小枝を発生させ、小枝は下垂します。この小枝に開花が起こります。ベイサルシュート、主幹は小枝を上空へ押し上げ、株の上部に大きく樹冠を作るための柱の役割と解釈できます。

標準的は樹高としては 3m 前後。9 の樹形と比較するとコンパクトな姿です。バレリーナ、フィリスバイドなどがこの樹形にあたります。

11. 株立ち直立型

株立ち直立型

ベイサルシュートは株立ち状態に上方へ伸び、枝の先端部はカーブし、小枝を発生させます。

2 年目以降の主幹からは小枝が多く発生し、これに開花が起こります。ロサ カリフォルニカ プレナやロサ シナモメアが代表的です。

12. 直立株立ち型の樹形

株立ち直立型

直立型の樹形で、ベイサルシュートは強くまっすぐ直上に向け伸びます。

上部で多少枝分かれしますが、分枝は下垂する事はありません。枝は太さも多少はありますが、柔軟性を併せ持ち、翌春枝先に新芽が伸び出す事により、大きく枝を湾曲させ、サイドシュートの発生を促す様な運動をします。

非常に特徴的な性質を持ち、6 の樹形の対極的な位置にあると考える事ができます。この樹形を持つ代表的な品種は、ウイリアム ロブ、ジャンヌ ドゥ モンフォール等です。