月別アーカイブ: 2014年12月

トゲが無く植栽効果も抜群に高い白つるバラ – 「つる サマー スノー」

つる サマー スノー

本年最後のご紹介となります。品種はクライミングローズの「つる サマー スノー」です。

○品種解説ページ: つる サマー スノー – Summer Snow (Cl)

庭園への使いやすさにおいて、「つる アイスバーグ」と双璧を成す往年の名品種です。

白いさざなみのように大きな房になって咲き、波打つ花弁が美しくとても気品があります。枝にはトゲが全くありません。すらりと伸びた枝はどのような場所にも誘引しやすく手間もかかりません。独特の細長い照りの有る葉はサマー スノー特有のもので、茂りも良く白い花との相性もバッチリです。

花付きはクライミングローズの中でも屈指の多さで、春になると枝いっぱいに花を咲かせます。ステムが短めなので、枝に近いところで花を咲かせます。そのため、構造物との一体感がでやすく、演出効果も抜群に高い品種となっています。

花付きがよく、ステムが短く、トゲが無い、葉もよく茂る。枝はしなやかで誘引しやすく、伸長力もある。園芸素材として重宝される要素を多く兼ね揃えた「つる サマー スノー」は、白つるバラの中で最も扱いやすい品種の1つだといっても過言ではありません。大きなアーチ、壁面、フェンス、ドーム、パーゴラ、窓まわり、どの場所へも最高の演出効果を発揮してくれます。「つる アイスバーグ」と並んで今後も長く愛されることでしょう。

少し欠点があるとすれば、「うどんこ病」と「葉ダニ」に対してあまり耐性を持っていないので、風通しがよい場所へ植栽されてください。

寒い地方では、冬の北風に当たると枝が白色化しますが、枯れているわけではないので春になれば新しい芽がでてきます。その白色化した枝も鑑賞できるような演出もよいでしょう。

「つる サマー スノー」ですが、名前からみると四季咲きの「サマー スノー」から枝変わりで伸びたものだと考えてしまいますが、実は違います。「つる サマー スノー」は「春がすみ」に似た「Tausendschön(タウンジェントシェーン)」という品種の実生です。四季咲きの「サマー スノー」が「つる サマー スノー」の枝変わりで、つる性から四季咲き性へと変化した非常に珍しい例です。他には四季咲き性「リトル ホワイト ペット」がつる性「フェリシテ エ ペルペチュ」の枝変わりだと言われています。

「つる サマー スノー」ですが、株が若いうちは春一回のみ開花、つまり一季咲きの品種のように思われますが、株が充実してくると夏にもいくらか返り咲いてくれますので、品種の性質としては「返り咲き」になると思います。秋には開花しません。因みに、「つる サマー スノー」の枝変わりである「春がすみ(つる性)」は、株が充実しても本当に春にしか咲かないのでこちらは一季咲きです。

「つる サマー スノー」は、庭園素材として大変優れた能力を持った素晴らしい品種です。頭のなかで描いている風景を作り出すための候補として1つ考えていただければと思います。

清楚な純白の花と、青味を帯びた葉が美しいアルバローズ代表格 – 「アルバ セミプレナ」

アルバ セミプレナ – Alba Semi-plena

今回ご紹介させていただきます品種はアルバローズの「アルバ セミプレナ」です。

○品種解説ページ: アルバ セミプレナ – Alba Semi-plena

アルバローズの成り立ちはガリカローズほどはっきりしていませんが、生粋の原種ではなく交雑種であるという見解では一致しています。交配親はロサ・ガリカとロサ・アルヴェンシス、またはロサ・ダマスケナとロサ・カニナの交雑で生じたなど諸説あります。

この交雑により誕生したアルバローズ、その中で最も古代のアルバローズ(ロサ・アルバ)に近いとされる品種が「アルバ セミプレナ」です。断定はできませんが、「アルバ マキシマ」という品種の枝変わりとされています。(※「ロサ・アルバ」はロサ・ダマスセナとロサ・カニナの交雑種であると考えられています。)

ルネッサンス時代の名画「ヴィーナスの誕生」において、画面に描かれた白いバラは「アルバセミプレナ」ではないかと推測されています。古くから名花として描かれている品種です。

「白色の花の祖」と言われるアルバローズにおいて、最もそれを体現している品種かと思います。白い花弁におしべが目立つ、非常に美しい花です。アルバローズの特徴である青味を帯びた独特の葉との調和はアルバローズの特権、花のない時期はこの葉を楽しみたいという方もいらっしゃいます。アルバ セミプレナはさらにレモンを含むような、独特の爽やかな芳香もあります。

「アルバ セミプレナ」は、耐病性と耐寒性に優れます。良好な状態を維持できれば黒星病などにはほとどんどかからないようです。当園のような寒い地域でも、あまり枝枯れを起こさないので、寒さにもある程度の耐性を持っているようです。実付きも大変良く、果実酒への利用など実用性にも富んでいます。

伸長力は旺盛な方ですが、同じく一季咲きのガリカローズほど枝の柔軟性が無いため、植栽場所が意外にも限られてきます。やや自立気味になるので、壁面や大きめのトレリスなどへ誘引するか、いっそ自然樹形で剪定をしながら庭木のように仕立てるのもよいでしょう。少し強く剪定しても花付きは衰えません。やりすぎはもちろん厳禁ですが。

枝の伸び方の特徴を考える必要があるので、ガリカローズより少し上級者向きと思える品種たちではありますが、アルバローズだけがもつさまざまな魅力はバラ愛好家にとって大変貴重なものです。清楚な雰囲気を作り出したいときにお一ついかがでしょうか。

大きな花から強く甘い香りが漂う、早咲きのつるバラ – 「スパニッシュ ビューティー」

レッド ネリー – Red Nelly

今回ご紹介させていただきます品種はクライミングローズの「スパニッシュ ビューティー」です。

○品種解説ページ: スパニッシュ ビューティー – Spanish Beauty

現在でも香りの名花として高い人気を誇る品種です。スペインを代表するバラ育種家「ドット」の作品です。ドットは他にもハイブリッド ティー初のバイカラー品種「コンデサ デ サスタゴ」や、ミニチュア種「マリリン」など他系統にも多くの功績を残しています。

「スパニッシュ ビューティー」は非常に面白い交配がされています。

○Frau Karl Druschki × Chateau de Clos Vougeot

ハイブリッド パーペチュアル種で白の名花誕生の礎となった「フラウ カール ドルシュキー」、そしてハイブリッドティー初の黒赤ばらで香りの名花でもある「シャトー ド クロブージョ」が親品種です。「フラウ カール ドルシュキー」からはつる性と白の色素を、「シャトー ド クロブージョ」からは濃厚な甘い香りを受け継ぎました。

親品種は双方とも返り咲き、または四季咲きなのですが、「スパニッシュ ビューティー」はつるとしての性質が強く現れたようで「一季咲き」となっています。比較的早咲きで、平地であれば4月後半あたりから開花することもあります。10㎝もある大きく優雅な花からは強く甘い香りが漂い、春のお庭をいち早く彩ってくれます。

初期の頃は枝が少ないのですが、伸長力は強く4m以上枝を伸ばします。ただ、枝が少し固めでステムが長い品種のため、実は植栽場所が限られる品種でもあります。ステムが長い品種は、主幹となる枝から離れた位置で花を咲かせるため、花が疎らになりやすく構造物との一体感が薄れてしまう欠点があります。

そのため、「スパニッシュ ビューティー」は大きく広い場所、「壁面」や「窓まわり」、「パーゴラ」などへの誘引が適切で最も植栽効果がある方法かと思います。下へ垂れながら花が咲くので、見上げるような位置に花が付いていても大丈夫です。小スペースで無理に曲げるより、広々とした場所へ誘引させてみましょう。

枝が少なく寂しい印象になってしまった場合は、間に小輪のよく開花する別のバラを入れてあげれば綺麗にまとまってくれます。少し扱いが難しいですが、香り高いつるバラとして貴重な品種なので上手に使いこなしてみましょう。

赤紫の花と独特な樹形、そして黒い実が特徴の原種系交雑種 – 「レッド ネリー」

レッド ネリー – Red Nelly

今回ご紹介させていただきます品種はハイブリッド スピノシシマ種「レッド ネリー」です。

○品種解説ページ: レッド ネリー – Red Nelly

ヨーロッパから西アジアにかけて自生していた原種「ロサ スピノシシマ」と深く関連する品種で「ハイブリッド スピノシシマ」という系統分けがされています。「ロサ スピノシシマ」の別名に「ロサ ピンピネリフォリア(Rosa Pimpinellifolia)」という名前がありますので、「ハイブリッド ピンピネリフォリア」とも呼ばれます。植物学的には「エウロサ亜属」の「ピンピネリフォリア節」という分け方がされています。

レッド ネリーは赤紫の特異な色彩と、よく目立つおしべとの対比が非常に美しい品種です。花径は約5㎝、春にのみ咲く「一季咲き」ですが「早咲き」で春の初め辺りからすでに開花し始めます。「ロサ スピノシシマ」の系統なので枝は細く、枚数の多い小型の葉があり、トゲが多めでコンパクトにまとまります。

急激に伸長することはなく、徐々に株を充実させながら1.5mほど枝を伸ばします。つるとして誘引させてもよいですが、最終的に自立し始めるので、自然樹形のまま管理し小さな庭木としてお育てになったほうが最もこの品種の良さを活かすことができるでしょう。当園でも地植えになっているレッド ネリーがございますが、誘引はせず支柱も入れないでそのままの姿で育成しています。縦横高さが1~1.5mほどで収まっているので小さなお庭にも十分植栽できるでしょう。

原産地がヨーロッパなので耐寒性と耐暑性についてはいまいちなところがありますが、病害虫の被害は少なく、一度冬を乗り切れば見た目の繊細さの割にしっかり育ってくれます。

レッドネリーの紅葉と実

また、秋になると葉が綺麗に紅葉し、秋の訪れを一層感じさせてくれます。また、「ロサ スピノシシマ」の系統であることから、秋になると実を付けます。ただ、この実が他のバラにない特徴を持っており、なんと赤色ではなく「黒」の実を付けることです。腐ってしまったというわけではなく、成熟すると黒くなるのです。この黒い実がまた何とも言えない調和を生み出し、株全体の美しさを引き立てます。

バラのイメージとは少し異なるかもしれませんが、日本の和風な庭園にも見事にマッチする観賞価値の高い品種です。伸びすぎることもないため、自然樹形のまま育てていただければ素晴らしい姿を見せてくれるでしょう。

希少な品種「プレシャス プラチナム」 – 弁質に優れた、イングリッド バーグマンの親品種

キラニー – Killarney

今回ご紹介させていただきます品種はHT種「プレシャス プラチナム」です。

○品種解説ページ: プレシャス プラチナム – Precious Platinum

世界連合バラ協会において、2000年に10番目の殿堂入り品種として選ばれた赤色の名花「イングリッド バーグマン」の親となる品種が「プレシャス プラチナム」になります。

「イングリッド バーグマン」は、整った花形や優れた弁質、照りのある葉や良好な花付きなど総合的に優れた品種で、作出されてからわずか16年で殿堂入りを果たしています。

では、そのルーツはどこにあるかというと、この「プレシャス プラチナム」からいくつか受け継がれています。因みに、「イングリッド バーグマン」のもう片方の親は不明です。

「プレシャス プラチナム」も「イングリッド バーグマン」同様に退色しづらい優れた弁を持ち、鮮やかな赤色の花、照りのある葉、そして新芽が銅葉であるという組み合わせは株全体の観賞価値を飛躍的に向上させ美しい姿を見せてくれます。

「イングリッド バーグマン」の欠点として樹勢の付きにくさが挙げられますが、親品種である「プレシャス プラチナム」はその点問題なく樹勢強健で株姿も整いやすく、非常に育てやすい品種となっています。屋外での整形花の得られやすさは「イングリッド バーグマン」に一歩譲りますが、ハウス内で育成すると「プレシャス プラチナム」も見事な剣弁咲きとなります。

「イングリッド バーグマン」は非常に整った花形が評価されましたが、切り花用の生産ルートには乗ることはありませんでした。花付きは確かに良好なのですが、到花日数(発芽から開花までに要する日数)が少し長く切り花の生産には向かなかったためです。

同じように「プレシャス プラチナム」も遅咲きな点が少し残念なところで、開花して花がらを切ってから次の花が咲くまで少し時間がかかります。株の丈夫さには問題はありませんし、花壇用品種としては大変優れた性質を持っているので、ゆったり落ち着いた心構えで育てていけばバラも返事をしてくれるでしょう。

希少な品種「キラニー」 – 初期HT種、ティーローズの影響が強く出ている強健細枝種

キラニー – Killarney

今回ご紹介させていただきます品種は初期HT種「キラニー」です。

○品種解説ページ: キラニー – Killarney

現在では希少となってしまった最初期のハイブリッドティー種の1つです。作出年は1898年、イギリスの Alexander Dickson II世 が作出しました。先代の Dickson I世 は世界で最も古いバラ育種会社の1つである「ディクソン社」を創立した方です。

キラニーの交配は下記のようになっています。

○Mrs. W.J. Grant × Charles J. Grahame

どちらも当園では取り扱いがないのですが、どちらも Dickson II世 作出のハイブリッドティー種です。「Charles J. Grahame」はクリムソンレッドの花で、キラニーの色が少し濃くなった一因になっているようですが、交配親は不明。もう片方の「Mrs. W.J. Grant」は、なんとあの「ラ・フランス(La France)」と「レディー マリー フィッツ ウィリアム(Lady Mary Fitzwilliam)」の子供です。

両者ともにハイブリッドティー種確立の立役者となった歴史的な品種です。特に、ラ・フランスは結実性の悪さから交配親としてあまり利用されなかったのですが、数少ない交配種である「Mrs. W.J. Grant」が多くの子供を残しています。


さて、作出年からも分かる通り「キラニー」は非常に古い品種で現在は希少になっています。以前「アイリッシュ エレガンス」の記事でも書きましたが、黄色の色素を持ってきてくれた「スブニール ド クロージュペルネ(1920年作出)」以前のハイブリッドティー種は、実は病気耐性や樹勢が強い傾向にあります。これは、ロサ・フェティダ系が持っていた”弱点”の影響を受けていないからです。最初期のハイブリッドティー種は、20世紀中頃の品種よりも強いことが多いです。

「キラニー」もその例に違わず、非常に丈夫なハイブリッドティー種となっています。初期ハイブリッドティー種なのでティーローズの影響がまだ強く残っており、細枝性で花弁数が少なめ、花の開きが早いのですが花付きは良好です。樹は半直立性、細枝ながらよく伸長し大型の樹になってくれます。樹勢強健で病気や寒さにもある程度の耐性を持っている、非常に育てやすい品種といえるでしょう。(ただ、四季咲きなので病気にかからないとまでは言えません)

「古い=まだ改良前で弱点も多い」というわけではありません。逆に古いからこそ勝っている性質もあります。「キラニー」は派手さはありませんが、丈夫に育ってくれるので珍しい品種が欲しい場合におひとついかがでしょうか。

赤い小輪のランブラー、しなやかな枝と伸長力を使いこなそう – 「エクセルサ」

エクセルサ – Excelsa

今回ご紹介させていただきます品種はランブラー種「エクセルサ」です。

○品種解説ページ: エクセルサ – Excelsa

「ランブラー ローズ」に分類されているローズレッドの小輪房咲き花です。もう少し細かく分類すると、「ロサ ウクライアナ【 Rosa wichuraiana 】」の血を引いたランブラーのため「ハイブリッド ウクライアナ」という系統に分類されます。別名「レッド ドロシー パーキンス」。

ピンク色のドロシー パーキンスと同様、最も遅咲きのランブラーローズの1つ。一季咲き。当園のような寒冷地では7月にならないと満開にならないこともあります。ただ、花付きは大変良く、鮮やかなローズレッドの花が一面を覆う姿は圧巻の一言。満開時はまさに花のビッグウェーブです。

樹は匍匐性(ほふくせい)のため、地面を匍うように伸びていきます。伸長力が旺盛で、6m以上は確実に成長します。枝は非常にしなやかなため柔軟性が高く、場所さえ確保できればどのようなシチュエーションでも最高の姿を見せてくれます。構造物の形に密着しての誘引も可能です。

匍匐性の枝を利用して壁面などに垂れさせるのもよいでしょう。トゲは少し多め、サイドシュートが多く出るのでその枝がうまく利用できるように工夫してみましょう。

エクセルサ

別名「レッド ドロシー パーキンス」から想像するとピンク色の「ドロシー パーキンス」の枝変わりなのだろうと予想がつきます。当園でも過去のカタログではそのように表記しています。ただ、図鑑等ではドロシー パーキンスの枝変わりではなく交配種であると記載されていることもあります。交配は「Rosa wichuraiana × Crimson Rambler」です。花の形も枝や葉の性質もほとんど一緒なので枝変わりと言われても納得できるほどそっくりなのですが、実際のところはまだはっきりしないようです。

ただ、どちらでもロサ ウクライアナ(テリハノイバラ)が関連していることには間違いありません。日本原産の原種であるロサ ウクライアナ、今では「ロサ ルキアエ」という名前に改名されましたが、この品種は全バラ中屈指の耐病性を持ち合わせています。そのため、その子供である「エクセルサ」も耐病性に優れ、さらに寒さにも強い品種となっております。

寒冷地でもしっかり伸びて広い範囲を覆ってくれる「エクセルサ」は、うまく使えば素晴らしい風景を作り出すことができます。枝がしなやかで、花付きよく小輪の赤い花は別の品種との相性もよく、園芸用として非常に使いやすいおすすめの品種です。広いお庭があるお客様は1株いかがでしょうか。

因みに、似た品種としてクライミングローズの「キング(キングローズ)」がありますが、枝の伸び方は通常のクライミング樹形(斜め上に伸びる)になり、またトゲが少なく、樹全体の雰囲気が異なるので違う品種といえます。

また、交配種としてクライミングローズの「スーパー エクセルサ」という品種があります(当園では取り扱いなし)。こちらは返り咲きがあるエクセルサという立ち位置にありますが、花や枝の伸び方が一季咲きのエクセルサと異なるため使いこなし方も変わってきます。よく観察して風景を作っていきましょう。

白色の四季咲きバラ誕生に貢献したHP種 – 「フラウ カール ドルシュキー」

フラウ カール ドルシュキー – Frau Karl Druschki

今回ご紹介させていただきます品種は純白のHP種「フラウ カール ドルシュキー」です。

○品種解説ページ: フラウ カール ドルシュキー – Frau Karl Druschki

赤やピンク色がメインを占めるハイブリッド パーペチュアル種において、珍しく純白の花をしています。この純白の花に注目が集まります。作出当時のドイツ・バラ協会会長「カール・ドルシュキ婦人」に捧げたものです。

ハイブリッド パーペチュアル種なのでつる性になります。日本ではかつて不二(ふたつとない)の名で親しまれました。花弁数は35弁程度の半剣弁。蕾のうちはうすいピンク色がかかっていますが、開花すると白くなります。直立気味の枝ぶりをし、樹高は4mほどになります。トゲが少し多め。また、香りは少ない。

樹勢は良い方ですが、その代わり返り咲きは夏頃まで。ハイブリッド パーペチュアル種なので病気等には注意が必要ですが、明るい緑の葉と白の大輪花との調和が美しく、トンネルや窓まわりなどで植栽効果を得られるかと思います。


現在多く見られる「ハイブリッド ティー ローズ」、この系統は ハイブリッド パーペチュアル ローズ と ティー ローズ の交配によって誕生した完全四季咲き木立性の系統です。最初は薄いピンク色などが主流のハイブリッド ティー種でしたが、この「フラウ カール ドルシュキー」の誕生により”白色”という新しい色がハイブリッド ティー種に加わりました。

例えば、「マーシャ スタンホープ」や「メモリアム」「ミセス チャールズ ランプロウ」などが直系品種として有名です。交配親としても活躍した純白のハイブリッド ティー種「ブランシュ マルラン」の白色も元を辿れば「フラウ カール ドルシュキー」に行き着きます。

また、ハイブリッド ティー種だけでなく他系統にも影響を与えており、ティー種の「ミセス ハーバート スティーブンス」やフロリバンダ種の「グルス アン アーヘン」、さらにクライミング ローズの「スパニッシュ ビューティー」も直系の子供です。

現在多く見られる白色の名花も、交配親を辿ればその多くがこの「フラウ カール ドルシュキー」に行き着くでしょう。このように、白色の四季咲きバラの礎を築いたバラとも言える歴史上重要な品種でもあります。

作出者の「ペーター・ランベルト」はオールドローズの品種保存に尽力し、ロザリウム・ザンガーハウゼンという”品種保存を目的とした”バラ園をドイツに開設しました。今でも世界最多の品種数と株数を誇り、その功績を残しています。

房咲き性の親となった日本の野ばら、庭園素材としても優秀 – 「ロサ ムルティフローラ」

ロサ ムルティフローラ – Rosa multiflora

今回ご紹介させていただきます品種は日本産の原種「ロサ ムルティフローラ」です。

○品種解説ページ: ロサ ムルティフローラ – Rosa multiflora

沖縄県以外の日本全域に自生している、日本人にとってはもっともメジャーな原種バラと言えるでしょう。野山等でも見かけるほど日本人によっては馴染みのある品種でご存知の方も多いでしょうが、バラの歴史において非常に重要な役割をもった原種です。

日本では「野バラ」「ノイバラ」などと一般的に呼ばれます。学術名は「ロサ ムルティフローラ 【 Rosa multiflora 】」。万葉集では「棘原(うばら)」や「宇万良(うまら)」などの名前で記録が残っています。

自生種はトゲがありますが、亜種も多くトゲの少ない野バラもあります。それらを選抜したのが、現在多く出回っている「棘なし野バラ」です。当園で扱いのある野バラも同じくトゲのない選抜種です。

バラの増殖方法として「接ぎ木」がありますが、日本では台木としてこの「棘なし野バラ」を一般的に利用しています。トゲの無いすらりとした枝はスタンダードの台木にも利用され、日本のバラ苗生産の根底を担っています。

のばらの枝

品種としての特徴ですが、「棘なし野バラ」であればもちろんトゲはありません。一季咲きで少し遅咲き、花は小さな白一重花で房になって咲きます。樹勢もよく、よく茂り、4mほどまで伸びます。一季咲きのため枝はしなやかで節もなく誘引はしやすい。秋になると安定して赤い実を付け、古くから「営実(えいじつ)」という名の漢方として使われてきました。

自然樹形で育てるとドーム状になります。日本の自生種だけあって耐寒性や耐病性も強い方で非常に育てやすい品種です。

「メジャーすぎてつまらない?」と侮る無かれ、原種ながら園芸品種としても非常に優れています。トゲの無いしなやかな枝はどのような場所にも誘引しやすく、抜群の花付きで周囲を圧倒させます。また、小さいな白一重の花は別の品種との相性もよく、お庭を彩る上で表現の可能性をぐんと広げることができます。葉の茂りもよいので寂しい印象もなくなるでしょう。病気にもかかりにくく、樹勢がよいので非常に育てやすいのも評価ポイントです。(ただし、葉質は少々弱く寒冷地の方は気温の低い時、ベト病に注意です。)

当園で「つるで白の小輪バラがほしい」というお問い合わせをいただいたら、この野バラもよくおすすめしています。その理由は、庭園素材として扱いやすいからなのです。「よく見かけるから・・・」という理由でそのすばらしい性質を蔑ろにはしてはいけません。

のばら

この「ロサ ムルティフローラ」ですが、台木としての重要性だけでなく、実はバラの歴史上でも非常に重要な原種です。

日本以外に自生していた原種、またそれらの交雑によってできた「古いオールドローズ」たちは、実は房咲き性をほとんど持っていなかったのです。1つの花茎に数個の花が付く程度で、「ロサ ムルティフローラ」のようにたくさんの房になって咲く性質はありません。

19世紀の初め辺りで日本からヨーロッパへと「ロサ ムルティフローラ」が伝えられました。今までのバラに無かった「房咲き性」を積極的に取り入れ、新しいバラたちを生み出しました。それが「ポリアンサ ローズ」や「フロリバンダ ローズ」です。もちろん、その他のつる性の品種たちにも取り入れられ房咲き性を獲得していきました。特に「ランブラー ローズ」にはロサ ムルティフローラ由来の品種も多くあり、それらは「ハイブリッド ムルティフローラ」という系統でまとめられています。

今日に多く見られる房咲き性の由来は日本の「野バラ」にあるのです。
バラの房咲き性の親として、現在のバラ生産の台木として、庭園素材として。メジャーでありながら「ロサ ムルティフローラ」は現在でも愛されるべき存在「名花」なのです。

最強の樹勢を持つグランディフローラ第一号品種 – 「クイーンエリザベス」

クイーン エリザベス

今回ご紹介させていただきます品種はグランディフローラ種第一号「クイーン エリザベス」です。

○品種解説ページ: クイーン エリザベス – Queen Elizabeth

ハイブリットティ種が持つ大輪の花と強健さ、それとフロリバンダ種が持つ房咲き性を取り入れて誕生したのが「グランディフローラ ローズ」、その第一号品種が「クイーン エリザベス」になります。世界バラ会議において、1979年に2番目の殿堂入りを果たしました。

交配はHT種「シャーロット アームストロング」とF種「フロラドラ」です。

○Charlotte Armstrong × Floradora

アメリカの名花「シャーロット アームストロング」からは大きな花と強健な樹勢を、「フロラドラ」からは房咲き性を受け継ぎました。「クイーン エリザベス」は非常に強健な品種で、典型的な完全直立樹形。太い枝を真っ直ぐ上に伸ばします。

「グランディフローラ ローズ」は四季咲き性なので、春から初冬にかけて連続して開花します。花径は約9㎝ほど、淡いピンク色の花と丸みを帯びた照葉との相性もよく育てやすい品種。花枝は太いので垂れることはなく、空に向かってしっかりと開花します。香りは薄いですが、微かにティーの香りがします。

「クイーン エリザベス」の特徴は何と言ってもその「樹勢」です。すべてのバラの中で最強との呼び声もあるほどの強さで、太く強いシュートを何本も出し、一年で1m以上はゆうに成長、年数が経てば2mは簡単に伸びるほどの強さです。その樹勢の強さは様々な書籍で紹介され、「初心者でも簡単に育てることができるバラ」として注目を集めました。

ただ、花は上を向いて咲くため樹高が高すぎると花を楽しめなくなります。適度に剪定をしてあげて花が目線の高さになるよう調節してみましょう。また、「四季咲き品種」ではありますので病気耐性はそこそこ、害虫には通常通り影響を受けるので注意。しかし、枯死さえしなければ再生は容易でしょう。

「グランディフローラ ローズ」は、ハイブリットティ種との明確な違いがないという理由で系統としては認められていないことも多いのですが、フロリバンダ種にはない強健な樹勢は特筆すべき特徴です。

「クイーン エリザベス」は作出された当時、戴冠したばかりのエリザベス二世に捧げられた記念すべきバラです。芯の強い人柄をそのまま体現したような「クイーン エリザベス」は、その名に恥ない名花だと思います。