ばら苗の手入れ

黒星病への対処方法

黒星病への対処方法

ばらは病害虫被害が多い植物ですが、そのなかでも黒星病はもっとも多発し、また防除の難しい病気です。ばらを栽培されている方ならば、どなたも一度は目にされていることと思います。

黒星病は雨水(特にはねかえり)を介して病原菌が葉から侵入し、やがて黒くにじんだような斑点や、丸い黒斑が多数葉に表れます。羅患した葉はやがて葉は黄色くなって落葉します。斑点が現れることは病気の最終形態であり、感染した段階では見た目上の変化はありません。そのためかなり落葉が進んでから慌てて対処…ということになりがちです。

ばらにはつきものともいえる黒星病の悪影響を最小限にしつつ、よりよい株の生育を図る方法を考えてみたいと思います。

肥料切れを防いでまずは健全な株の育成を

ありきたりな表現ではありますが、人間の体と同様、ばらも元気よく育っていれば病害虫被害を受けにくくなります。そのために定期的な施肥は、黒星病予防には特に有効な手段と言えます。

黒星病は若い葉には出ない、という特徴があります。
若い葉は植物がもつ保護皮膜にしっかりとガードされており、これが黒星病への感染をふせいでくれているのですが、葉が大きくなり、固まってくるにつれて皮膜の効果が弱くなり感染をおこしやすくなります。

あるいはもっと初期に感染していて、目に見える形で現れてくるのがちょうど葉が固まってくる頃、という見方もできます。いずれにしても若い葉には発生しない特徴を生かして、肥料切れをおこさせないように注意し、花がらは早めに切って、生育期間中は常に新芽が出ているような管理を心がけて下さい。そのうえで定期的な薬剤散布があれば、かなり違いを実感していただけると思います。

また鉢栽培は肥料切れを起こしやすく、黒星病を多発させる原因ともなります。肥料の袋に記載されている分量で、(または少し多めくらいで)こまめに回数多く与えてゆきたいものです。

なお、一度黒星病で落葉させてしまった場合は、若い葉にも病気が発生することがあります。これを防ぐためには次に述べるような、専門の薬剤による防除が必要です。

消毒と展着剤の工夫

多くの農家にとって薬剤散布は最も厳しい作業のひとつであり、かかる経費も相当なものです。できれば避けたいと誰もが思うところです。しかし黒星病によって落葉させてしまうと樹勢も弱り、特に新苗のような小さな苗ではその影響はのちの生育にまで響いてしまいます。

葉を落とすということは植物にとっては重篤な状態といえますので、やはりここは専門の薬剤の力を借りることが必要になります。

フルピカやラリー乳剤、サルバトーレME液剤などをできれば交互に使用するほか、アビオンEなど保護膜強化にすぐれた展着剤を使用してみてください。(当方ではアビオンの希釈倍率は1000倍で使用しています。)

黒星病を防除できる期間が長くなるのを実感していただけるのではないでしょうか。
展着剤の効用は大きいのでこだわってみる価値はあります。

当園では、下記の農薬を使用しております。
展着剤はそれぞれ1つを、その他の農薬はローテーションしながら使用しています。

黒星病予防

  • フルピカ (液体・2000倍)
  • サルバトーレME液剤 (液体・3000倍)
  • マネージDF (粉末・4000倍)
  • ダコニール (液体・1000倍)

展着剤

  • アビオンE (液体・1000倍)
  • スカッシュ (液体・1000倍)
  • まくぴか (液体・5000倍強)
  • 雨のかからないところでは発生しない

    黒星病の発生は降雨と密接な関係があることがわかっています。

    実際に軒下やビニールハウス内での栽培では、発生はかなり少なくなります。ポートランドローズや返り咲きのあるモスローズ、ロサ・フェティダの仲間など、耐病性に乏しい品種は最初から鉢にして、軒下で管理するのも一案です。

    一方で降雨による恩恵もなくなりますので、ハダニの被害や、うっかり乾燥させないような配慮が必要になってきます。マルチングも地面からの跳ね返りを防ぐ点で有効ですが、株元に日が直接あたっていることの効果も無視できませんので、病気が多発しやすい花後から盛夏、初秋にかけてと期間限定の方が望ましいと思われます。

    黒星病にならないばらもある

    一部の原種系ばら(ハマナシやモッコウバラ、サンショウバラなど)やミニチュアのグリーンアイスなど、本当に黒星病にかからない品種も少ないながら存在します。このような品種ばかりを集めても良いのです。

    また近年発表される品種は耐病性に優れたものが多くなっています。
    このような新しい品種から栽培してみるのも良いかと思います。

    しかしばらはたくさんの品種があり、その多様性こそが魅力でもあります。
    古いばらは耐病性では劣りがちですが、独特の気品と伝統に彩られています。美しく香り高い品種がたくさんありながら、黒星病の理由でこれらを排除してしまうのは少々もったいないように思われます。病気にかかりやすいことも個性として受け止め、より豊かなばらの魅力を堪能していただきたいと個人的には思っています。

    どうしても黒星病になってしまったら…

    株数が多くなればなるほど、残念ながら黒星病も発生しやすくなります。
    それにお仕事や家事、地域のお付き合いなど何かと忙しいのが日常。気がつけば、ばらは枝だけの寂しい姿に…ということも致し方ありません。

    けれどもばらはとても生命力豊かな植物。特に再生能力には大変優れていて、枝だけの寂しい姿になっても必ず回復してきます。真夏の暑さで落葉してしまった場合も、熱帯夜がなくなれば再び芽吹いて回復します。

    葉がなくなれば水や肥料の吸収は弱まりますので、今度は逆に肥料あたりや根腐れを 起こさせないような管理が必要です。水は土が乾くまでは控えるようにします。新芽が出始めたら少しずつ水やりを増やし、様子をみて施肥も少しずつ再開するようにします。薬剤散布も定期的に行って下さい。病気で落葉した葉はそのままにせず、できるだけ除去するようにします。

    黒星病そのもので枯死することはまずありませんので、定期的な施肥と消毒しやすい環境をまずは整えながら、さまざまな種類のばらを積極的に楽しんでいただきたいと思います。

    病気に罹った葉は除去するのが一般的ですが、凄く葉が減ってしまうようなら、程度の軽い葉ならあえて残し、一方で新芽やシュートが伸びるような管理を続けながら、葉の入れ替えを図る方法もあります。また10月以降に発生した場合などはあえて除去せず、少しでも光合成ができるように、株の充実をはかるために残すようにします。

    代表 – 姫野 由紀 著

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